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みかんと惑星

有/閑/二/次/小/説/のブログです。清×悠メインです。 当サイトは、原作者様・出版社等の各版権元とは一切関係ございません。 最初に注意書きをお読みいただければと思います。

薄明光線 ②

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薄明光線 ②

        -3-

月曜日に、たまたま2年生の教室のある廊下を清四郎は通っていた。3人の男子学生の話し声が聞こえてきた。
「楯野川、剣菱に告ったみたいだな。」
「すげーな、それ。剣菱なんてどこみたら女に見えんだよ。」
清四郎は思わず吹き出しそうになった。
--そうそう。
「ん~、でも楯野川ならありかも。あいつシスコンだから。」
「中等部のかわいい妹か?」
「ちがうよ。姉だよ、姉。」
姉という言葉に一瞬ドキッとする。
--僕の家にも恐ろしい姉がいる。
ふと思い出して、頭をぶんぶんと振ってしまった。
--そうじゃない。
続きを聞く。
「あいつのね~ちゃん、かっこいいんだって、まじで。俺も1度会ったけど、なかなかおもろいんだ。剣菱に雰囲気似てるな~。全然薫さんの方が色っぽいケドさ」
「へぇ~。じゃあ、よく高等部に顔を出す妹のほうは、ただのブラコン?」
「たぶんな~。春菜ちゃんは薫さんを嫌いみてぇだから、楯野川大変らしい。」
--悠理に似た姉ですか…。
そこへ悠理が現れる。
清四郎はドキッとする。
悠理の手にはハンカチが握られていた。
「なあ、お前ら」
悠理は3人に声をかける。
「楯野川、呼んでくれない?」
「はい」
1人が博人を呼びに行く。
悠理は暇そうに髪を触ったりしている。
が、すぐに博人がやってきた。
「悠理さん」
「これ…」
ハンカチをはにかんだ風に悠理が渡す。
「わざわざよかったのに」
博人が微笑んだ。
清四郎はこっそりその様子を伺うつもりだったが、さすがにいつまでもその辺りに隠れてる訳にもいかず、素知らぬフリをしてとおり過ぎようとした。
「あ、清四郎。」
悠理に呼び止められる。
「楯野川博人くん。」
紹介された。
紹介する一瞬、博人の顔をみる悠理は恥ずかしそうに微笑んだ。
自分の知らない悠理をみたような気が清四郎はした。
「はじめまして菊正宗さん。悠理さんとは以前、婚約されてましたよね。愛のない婚約の話は悠理さんから聞きました」
さわやか美少年にそういわれ、清四郎は心臓に矢を放たれた心境となった。早い話が傷ついた。
--愛のない婚約。ひどくブスッとした顔での記者会見。…ぼくは悠理を剣菱の付属品と考えてた。
「菊正宗さんにとっては、悠理さんの気持ちはどうでもよかったんですよね?。…いまの僕からすれば、破談になってくれてよかったです。」
清四郎は黙り込んだ。確かにあのときの清四郎の頭の中にあったことは剣菱を動かしたいということだけだった。
「博人。こんなとこでこういう話はやめよう。」
「ごめん、悠理さん。」
清四郎は「失礼するよ。」と、その一言をいうのがやっとだった。
思い出す昔の失敗。そして悠理のはにかんだ笑顔。清四郎の心の中に強い…絶望という名の風が吹いた。
--もう、手に入らないかもしれない。
あのときの自分を悔やむしかなかった。


        -4-

その日の放課後。
美童、魅録、悠理、野梨子の4人は生徒会室に来ていた。
美童と魅録は、野梨子の囲碁講座を熱心に聞いていた。美童は新しい彼女が囲碁好きだったため、魅録は清四郎を負かすためであった。
悠理は3人とは離れて、煎餅を噛りながら外をぼんやり眺めていた。
--なんで博人は清四郎にあんなことを。言わなくともいいことなのに。
なんとなく、気持ちが暗くなる。
そこへ可憐がきた。
悠理の隣に椅子をもってくると「デート、どうだったの?悠理。」と聞いた。
魅録、美童、野梨子が振り返る。悠理は真っ赤になる。
「なんで知ってるんだよ。清四郎から聞いたのか?」
--清四郎とデートしてたのか?
可憐以外は、皆、心の中で呟いた。
「違う違う。あんたたちが手を繋いでアイス食べてたのをたまたま見かけたのよ。なかなかいい感じじゃな~い」可憐が含み笑いをする。
「そんなことないじょ!!」
悠理は否定する。
「何がそんなことがないんですか?」
「清四郎…」
可憐以外の3人がいま生徒会室に入ってきた清四郎をみる。3人はまだ誤解したままだった。
「どうかしましたか。」
「なんでもないですわ。」野梨子が取り繕うように答えた。
清四郎は椅子に座ると書類に目を通し始めた。なんとなく悠理を見れず、悠理も清四郎を見なかった。
「で、どこにいったよ~。」ひじでつつきながら、可憐は悠理にツッコミをいれる。
「映画、食事、アイスだけだよ!」
「ふうん。手を繋ぐ以上は何もなかったの?」
「そんなのはないよ!」
悠理は恥ずかしそうに喚きながらいう。
「なぁんだ。まぁ、悠理だし~、おこちゃまだから仕方ないわね。」
可憐がくすくす笑うので、ぷうっと悠理は膨れた。
清四郎は興味ないふりをして、黙々と書類に書き込みをしていた。
心の奥のほうで悠理と博人が手をつないだことがひっかかった。
--これから二人は始まるのか…。
暗雲が心全体に広がっていくようだった。
野梨子は憂鬱そうな顔をする幼ななじみに気付いた。
--こんなとこで、こんな話をされるのが、嫌なんですわね…。
と誤解がとけていないので、違うことを思ってた。
清四郎の心に広がる暗雲が、そのまま天気に反映されてしまったのか、外は雨雲で暗くなってきた。
「雨が来そうね~」可憐がつぶやく。
そのとき悠理の携帯がなった。メールが届いた。博人から「一緒に帰りませんか」というメールだった。
「あたし、帰る。」ちょっと怒った口調で悠理がいった。
可憐が笑いながら「あ、誘われたのね」と悠理をつつく。
「違う!帰るだけだじょ。」また赤くなりながら、荷物を手にとる。
「じゃな。」と可憐と3人に顔を赤くしたまま手をふる。清四郎のほうを、一度も見なかった。
3人は初めて相手が清四郎ではないことに気付いた。憂鬱そうな清四郎をみて、魅録と美童は不敏に思った。
--娘を彼氏に取られた父親の心境か?
魅録は思った。魅録は悠理を女性としてみたことがなかったので、魅録自体も親離れする息子くらいにしか思えなかった。
美童は、清四郎が悠理をいじめているときの瞳の奥の優しさに気付いていた。
--動かないから、取られちゃうんだよ、清四郎。

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