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みかんと惑星

有/閑/二/次/小/説/のブログです。清×悠メインです。 当サイトは、原作者様・出版社等の各版権元とは一切関係ございません。 最初に注意書きをお読みいただければと思います。

変わらない、場所 ⑨

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変わらない、場所 ⑨

旦那が変だったときから2週間が過ぎた。その間、あたり触りのない会話をし、一見旦那は普通に見えた。
気のせいか、とあたしは思っていた。

その日、旦那の帰りは早めのはずだった。
でも、帰ってこなかったので、あたしは先に寝てしまった。そんなのはいつものことだったのだが。
寝ていると、突然誰かに頭を枕で押さえつけられた。
息苦しさで目を覚ますと酔っ払った旦那が充血した目であたしを見下ろしていた。
顔が凄く赤く、そして、憎悪に満ちた表情をしている。
「何すんだよ!」
枕に押さえられながら、声を上げた。思うように声が出ない。息苦しさが増す。手で振り払おうとするが、逆に手を捕まれる。そして、思い切り頭を殴られた。
「いたっ!!」
(殺される…。)
そう思った瞬間に手の力は緩められ、続いて髪を引っ張られて布団から出された。間髪なく頬を殴られる。
唇が切れて血が滲む。
「何するんだよ!寝てる間に卑怯じゃないか!」
旦那を睨みつける。あたしは応戦するつもりだった。座った姿勢のまま、頭を押さえられている。立ち上がるにも、立ち上がれない。
今度は続けざまに背中とわき腹を蹴られた。
「うっ…。」
あたしは痛さで体を折り曲げる。その瞬間、旦那が頭を押さえていた力を緩めた。
(いまだ…。)
あたしは体が痛かったが、そのまま旦那を殴りつけようとした。
すると、旦那は突然、大きな声であたしを制した。
「お前に僕を責める権利があるのか!ずっと僕の子だと思って育てて来たのに…!。青佳は僕の子じゃない!!!」
あたしは青ざめた。
「なんで…。」
そんなことを…。
旦那はDNAの検査結果の紙をあたしに投げ付けた。”生物学的父親ではない”、”0.0%”という数字が目に入る。
「どうして、検査なんか…。」
あれだけかわいがっていたのに、何故検査を?
微塵も自分が父親だということを疑ってないように見えたのに。
「ある人が教えてくれた。青佳がA型だってな。OとBからAは生まれない。」
「ある人って…。」
「言う必要ない!」
そう言って呆然としているあたしを再度殴った。
その後旦那は自室に入って行った。
鏡で顔を見ると頬のあたりが腫れていた。蹴られたところも内出血はしていなかったが、痛い。
口も殴られて切れていた。血がにじんでいる。
青佳はベッドの端で何事もないようにすやすや眠っている。
怒りの矛先が青佳に向かなくてよかった。それだけは安堵した。
あたしはベッドにもぐりこみ、青佳を抱きしめた。

翌朝、眠っていると突然布団を剥ぎ取られ、背中を蹴られた。
「いつまで寝てるんだ!」
旦那はあたしに憎悪の目を向けていた。
あたしは蹴られた背中をさすりながら、布団から這い出た。本当に旦那を殴ろうと思った。
すると「お前に殴れるのか?僕を。他人の子を育てさせておいて!」と旦那の怒りは収まらない様子であたしに言った。「僕がどれだけあの検査結果で傷ついたと思っているんだ!。」
あたしは閉口し握っていた手を開いた。いま、殴ろうと思えば彼を殴ることができた。
ただ、彼に闇のような深い憎悪の感情を与えたのはあたし自身だった。
他人の子を騙されて、自分の子として育てさせられたら、やっぱり、恨んだり憎んだりするだろう。
そう思うと殴ることができなかった。
旦那はあたしにどうしようもない怒りをぶつけるためにティッシュの箱を投げ付けた。あたしはつい咄嗟に避けてしまった。すると忌ま忌ましげにあたしを平手で殴ろうとした。反射的にサッとかわす。
旦那は舌打ちすると青佳に向けて手をあげようとした。
青佳が…!。
あたしは咄嗟に庇った。そして、また十数発殴られた。ただならぬ気配で目覚めた青佳は、火のついたように泣き出した。
旦那はその声で殴るのをやめ、部屋を出て行った。
このままじゃ、いずれ青佳まで殴られてしまう。青佳だけは守らなければならない。
あたしは旦那が会社に行ったあと、実家に帰ることにした。

実家に帰ると母が心配そうな顔で迎え出た。母はあたしから青佳を抱きとりながら「聞いたわよ。喧嘩したんですって?。殴ってしまって本当に申し訳ないことをしたって、電話がきたわ。」と言った。
「あ、そう。」
「それから、ちょっと強くいい過ぎたから、もしかしたらそちらに行くかもしれませんが、もしそっちに行ったときには傷ついているだろうから優しくしてあげてくださいって心配してたわよ。一体何があったの?」
「何でもない。第一喧嘩なんかしてないし…。」
「悠理。」
母はあたしを見つめた。
「あんなに優しくていい旦那さん、おまえには勿体ないくらいなんだから、大事にしなさい。」
「…。」
あたしは無言で自室に篭った。
優しくて、いい旦那さんか…。
あたしが裏切らなければ、あたしもそう思っていたかもしれない…。
殴られた頬が痛んだ気がした。

夜になり旦那が迎えに来た。あたしの部屋に入って来る。
すると今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「悠理、僕は君を愛してるんだ。さあ、僕たちの家に帰ろう。」
「いやだ!」
あたしの腕を引っ張る。
旦那の怒りのスイッチが入ったようだった。目がきりりとつりあがる。
「君が家に帰らない。そして浮気をして子をもうけたことがマスコミにバレたら、僕だけじゃなく、君の両親や豊作兄さんにも迷惑がかかる。剣菱グループ全体のスキャンダルとして取り上げられるんだぞ。」
強い口調で言う。
あたしは黙りこんだ。
5年前のあたしであれば、スキャンダルが何?って、言っていただろう。
でも、もうそんなことは言えない。青佳のこともあるし、今はインドにいる清四郎や清四郎の家族にも迷惑がかかるかもしれない。
「さあ、帰るんだ。」
あたしは嫌々ながら家に帰ることにした。青佳が一緒にいて狙われたら嫌だったので、今日は母に頼んだ。

家に帰るとお手伝いさんの作った夕飯を二人で食べた。会話は全くなかった。
会話もなくて、本当に家に戻ってきてよかったんだろうか…。
その日もまた旦那は別室で寝た。あたしは少し安堵した。
翌日から旦那は二週間出張に出掛けた。
あたしはまた蹴られないようにその朝だけ起きた。朝食は一緒に摂ったが、会話はなかった。玄関まで見送り、「いってらっしゃい。」とだけ声をかけた。旦那は何も言わずに出て行った。

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おそらく皆さんの予想どおりの結果だったのではないでしょうか。
とりあえず、暴力は今回だけだと思われます。
 (2006.02.14)りかん

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