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みかんと惑星

有/閑/二/次/小/説/のブログです。清×悠メインです。 当サイトは、原作者様・出版社等の各版権元とは一切関係ございません。 最初に注意書きをお読みいただければと思います。

変わらない、場所 ⑫

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変わらない、場所 ⑫

僕はインドで日々を忙しく過ごしていた。寝る間も惜しんで働いていた。働いている間だけ、悠理のことを考えずに済んだ。
家に帰ると高校生の頃の悠理の写真が僕に微笑みかけている。サービス版の写真を写真立てに入れて机の上に置いてあった。未練がましいとも自分で思うが、悠理の笑顔をみただけで疲れが無くなるような気がした。
高校生のときの、僕たちが付き合う前に皆で河口湖に行ったときの写真で、いつもみたいな面白い顔ではなく、悠理は微笑んでいた。
「悠理、富士山をバックに写真を撮ってあげますよ。」そう僕が声を掛けると「うん。」とにこやかに微笑んだ。
その瞬間にシャッターを押したものだった。
他のメンバーはボートに乗っていた。僕たちはたまたまトイレに行っていて、悠理がさらに出遅れたのだった。
そのときの写真を渡せないまま、ずっと持っていた。
インドへ行くために部屋の荷物を整理していたときに、学生の頃に読んでいた本の間から見つかった。その写真を見つけたとき、あのころの甘酸っぱい思いが胸に押しよせてきて、涙が零れた。
幸福だったあの頃。
何をするわけでもなく、ただ悠理のそばにいることができた。それから暫くして付き合うことになったが僕たちは別れてしまった。そして友達を装っていた数年間。
今はもう友達として傍にいることさえ出来ない。もし、傍に行けば間違いなく旦那のもとから悠理を連れ去ってしまうだろう。
子供の親はいまの悠理の旦那だ。その子を不幸には出来ない。好きなのに。会いたくとも会えない。
”あたしは、会いたい”
最後の電話のときの、その言葉を思い出すと胸が苦しくなる。
ときどき、そんなことを写真を見ながら思い出してしまう。
その辛さを打ち消すために仕事に打ち込んだ。

その結果、ストレスと疲労で体調を崩し僕は日本に戻って来た。年が明けた2月のことだった。

僕は父親の病院にそのまま入院した。
「あんたが病気ね~。なんだか嘘みたい。」
姉は笑いながら僕を見た。「しかも、ストレス(強調)ですって!!」
「姉貴とは違ってデリケートなんですよ。外科なんだから内科・耳鼻科に用はないでしょう。さっさと仕事に戻ったらどうです?」
「酷い弟だわ。姉が心配して見にきてやったのに。」
「姉貴がいるほうが、病気になりますよ」
「私がきたほうが、早く良くなるわよ!」
姉はそういうと手を振って病室を出た。
まったく…。
僕を暇つぶしにからかいにきて。
あの人はそういう人だ…。
まあ、そういう僕も姉がきてくれれば、暇つぶしにはなるが。
本や新聞を読む気にもならず、ただ、ぼーっとテレビをつけて流していた。
入院してから、一週間が経過していた。
時々タブレットを起動して、メールをチェックするくらいだ。
僕からは、特に誰にも連絡はしてなかった。
連絡する必要もないと思っていた。
僕の中では、悠理以外とは会っても仕方なかった。
会えば、それなりに楽しいんだということはわかっていたが、いずれにしても悠理には会えない。
日本に帰って来て、最初に思ったのは”悠理のこと”だった。
今回病気になってしまったのは悠理に会えないストレスからかもしれない、とまで思う。
それほどまで悠理に会いたかった。
悠理に会いたくて会いたくてたまらない。会えただけで、病気が治ってしまいそうな気さえする。
でも、悠理には旦那と子供がいる。
自分から連絡して会えるはずがない。幸せな家庭生活を壊してしまいかねないから。
でも。
声だけでも、聞きたい。
話がしたい。
そう思うといてもたってもいられず、個室であることをいいことに僕は携帯電話をかけた。
”現在使われておりません”
えっ。
リダイヤルをする。
やはり結果は同じだった。
電話番号を変えてしまったんだ。
悠理の家に掛ければよいのだが、何故だかとても躊躇われた。
コンコンッ。
ノックする音がして、入ってきたのは野梨子と美童だった。
「清四郎、大丈夫なんですの?おば様から聞いて驚きましたわ。」
「ほんと大丈夫?胃潰瘍と肝炎とメニエール病だって?なんだかストレスの宝庫みたいだね。清四郎もストレス溜まるんだね。僕はそっちのほうが驚いたよ」
失礼な…。
「美童と違ってデリケートですからね。」と僕がにやりと笑うと「失礼だなあ。」と美童は苦笑する。
「治ったら戻るの?インド」
「いえ、なんとか仕事を軌道に乗せてきましたし、後継者も育ててきたので、あとはこっちにいてもなんとかなるでしょう。暫く休養のつもりです。辞めるかもしれませんがね。」
僕は苦笑した。
僕が日本に戻ってきたことを共通の知人から聞きつけた恩師から、大学の講師をやらないかというメールも来ていたので、いろいろな経験をするにはそれもよいかと思っていたところだった。
少し、生活を変えたかった。
「まあ。やめてしまうんですの?」
驚いた口調で野梨子は言った。
「意外でしたか?」
「ええ。薬好きの清四郎が、あっさり辞めてしまうなんて。」
「変態みたいに言わないでください、野梨子。」
「あら。だって、いつも変な薬を持ってましたでしょ。」
僕は苦笑した。
「酷いですね。でもまだ会社を辞めるかわからないんですよ。ただ、いろいろやってみたいことがあってね。」
「やりたいこと、1つじゃすまなそうだよね、清四郎の場合。」
僕は相槌を打つ代わりに美童に微笑んだ。
「ところで、3か月も前になるかしら。もう少し前でした?美童。」
野梨子はああ、そうだ、と何かを思い出したように、のんびりした口調で言った。
「ああ。あの件?」
野梨子とは対照に美童の口調は深刻そうだった。
あの件?
「ええ。清四郎。驚かないでくださいね。悠理が青佳ちゃんと失踪したんですのよ。」
えっ。
一瞬、時が止まる。
失踪?!
「そうなんだよ。今回はおじさんもおばさんも自分の意思でいなくなったんだからと探さないんだ。」
そんな…。
「どうして、悠理が。」やっとその言葉を口にした。
「ご主人と喧嘩したから出ていったのか、原因はあまりよくわからないんですけど、悠理が悪いみたいですわ…。でも、自分の意思で出て行ったのですから、きっと大丈夫ですわよ。」
そう言うと野梨子はかいつまんで悠理が野梨子の家に泊まった日のことを話した。
「そんなことが…。」
どうしてそんな風になってしまったんだろう?。
ただ言えることは、パジャマで家を出て行ったということは余程切羽詰まっていたのだろう。
そのとき、僕はどうして近くにいなかったんだろう…。
悠理を探さなければ…。
「清四郎、顔色よくないよ。」
美童が僕の顔を覗きこんだ。
「そう、…ですか。」
動揺が顔に出てしまったか…。
でも、その様子に気づくことなく、美童は「うん。そろそろ帰ろうか、野梨子。」と言った。
「そうですわね。また、来ますわ。清四郎。」
野梨子も普通にそう言っていた。全然、僕の同様には気づいてなかったようだった。
二人はあっさり帰って行った。
悠理は一体、どこに行ってしまったんだろう…。
自分の意思で出て行ったなんて、何があったんだ…。
会って、この手で悠理を捕らえたかった。ベッドの上にいるのがもどかしかった。

二人が帰ってまもなくして、魅録が現れた。
「よぉ!。痩せたな~、清四郎。」
久々に会う魅録の表情は疲れていたが明るかった。
「ええ。まあ。胃潰瘍でして。」
「ああ、野梨子から聞いたよ。大変だったな。」
僕は苦笑した。
「野梨子は皆に言ってるんですね。」
「まあ、野梨子ぐらいしかお前さんの情報は押さえられないからな。」
「そうですね。」
「ところで。」
魅録は言葉を区切った。「野梨子から聞いたか?悠理の失踪。」
魅録も悠理の失踪について切り出してきた。
「ええ。何か知ってるんですか?」
僕は平静を装った。ここで動揺してはいけない。
魅録は頷いた。
「おかしいんだ。悠理の失踪。」
「どういうことです?」
魅録は深刻な表情で話し始めた。
「まず、失踪した日なのか前日だったのかわからないが、俺のところに来たんだ。誰にも言うなって言われたんだけど、悠理に”離婚したい”って、言われたんだ。」
離婚したいほどの何かが悠理の身に起こったのか…。
「それから、家に子供がいたんだと思うんだけど、俺と別れるとき”子供が心配だから帰る”と言って、帰ったんだ。悠理のことだから、そのまま子供を放置して来るってことはありえない。きっと、誰かに預けてきているはずなのに、その発言はおかしいだろう?」
「子供が心配?」
「ああ。その上、おじさんもおばさんも探さないんだ。以前なら警察が動かなくとも、マスコミを使ってでも探したはずなのに、”悠理を探さないんですか?”と聞いたら”あの子は自分の意思で出ていったのだから、失踪に飽きたら帰ってくるでしょう。もう、大人なんだから。”って、有り得ないよな?。」
悠理の身辺に何かが起きている?
離婚したい。
子供が心配だから。
悠理の両親が、探さない?。悠理を…。
とても嫌な予感がした。
「悠理の身に何もなければいいですけど…。」
「ああ。そして、もう一つ、おかしいことがあるんだ。この記事見ろよ。」
魅録は僕に週刊誌の記事の一部を切り取ったものを見せた。
僕はその記事に目を通した。
悠理の旦那の会社の記事だった。保有しているIT関連企業の株の含み損が60億と出ていた。このままでは倒産してしまうのは間違いなかった。が、剣菱万作が含み損の分の融資をするという記事が載っていた。
「何かがありますね。これは…。」
魅録が頷いた。
「多分。」
「間違いないですね。悠理絡み、でしょう。」
おそらく悠理が出て行ったことで、何か悠理の両親と旦那が契約をしたんだろう。
それが何なのか、見当がつかなかった。

その夜、僕はおじさん、剣菱万作に電話をかけた。
でも、おじさんは言葉を濁すばかりで、何も言わなかった。
最後には『清四郎くんには関係ないことだ。悠理が出て行ってしまったのだから、仕方がねぇ。』
そういって、電話を切られた。
やっぱりおかしい。
僕は、豊作に電話を掛けた。
豊作は苦笑して、『そう、父さんが関係ないって、言ったのか。』と言った。
「ええ。悠理のことを大事に思っているはずなのに、仕方がねぇで終わらせるなんて、おかしいと思いませんか。」
僕がそういうと、一瞬間があったあと、『清四郎くんも、魅録くんも悠理のことには一所懸命なんだね。』といって苦笑した。
『じゃあ、清四郎くんの体が治ったら、一度会おう…。』

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なんか文章が、変…。

(2006.02.24)りかん

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