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みかんと惑星

有/閑/二/次/小/説/のブログです。清×悠メインです。 当サイトは、原作者様・出版社等の各版権元とは一切関係ございません。 最初に注意書きをお読みいただければと思います。

薄明光線 ①

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薄明光線 ①

        -1-

憂鬱な顔をして、生徒会室内に悠理は入ってきた。
「どうしました、悠理?」
気になったので、清四郎は悠理に尋ねた。清四郎は生徒会室に一人で居た。
何も答えずに、悠理は清四郎の近くの椅子に座ろうかどうか迷っていた。
迷った末、椅子に座ったが、だんまりだった。
答えたくないのであればと、清四郎はあえてそのまま突っ込まずにいた。
沈黙に耐えられなくなったのか、暫くしてから、悠理が口を開いた。
「2年の楯野川博人に告白されたよ。」
楯野川博人といえば、わりと大きい私鉄を持っている楯野川グループの御曹司である。ナイーブな感じで少し茶色の柔らかそうな髪をした、瞳の綺麗な美少年だった。
「よかったじゃないですか。」
「デートしようって言われた。どうしたらいいんだよ」
喚く。
「デート?」
悠理はこくりとうなずいた。
「別に…、普通にいけばいいじゃないですか。楽しいかもしれませんよ」
にこやかにいいつつも、清四郎は胸の奥に鈍い痛みを覚えた。
変ですね…?
「楽しいかどうかなんて、行ってみないとわからないじゃないか!!」
さっきからそういっているのに…。
清四郎は呆れる。
「で、デートは承諾したんですよね?」
そもそものことを聞く。
悠理は赤くなって頷いた。
清四郎はそんな悠理を見てなぜか胸がもやもやした。そして、とても嫌な気持ちがした。
一言でいえば、不快だった。
悠理が清四郎に甘えた声でいう。
「…あたし、まともにデートなんてしたことないから、どうしたらいいかわかんないよ。お前ならどうする?」
「どうすると言われても…、それは悠理の問題ですから、普段どおり適当に相手をすればいいじゃないですか。」
少しきつめに清四郎は答えた。
甘えた感じの悠理の声も不快だった。いつもはそんなことはないのに。
清四郎の答えに対して、悠理は押し黙った。
しばし沈黙した後「そっか。」と一言残して、”じゃあ”とも何とも言わずに生徒会室を出て行った。
それも清四郎は不快だった。
挨拶くらいすればいいのに。
ドアが開いて入れ代わりに野梨子が入ってきた。
「清四郎、いま悠理が何か考えごとをしながら出ていきましたけど何かいいましたの?」
清四郎は何も答えない。
黙々とPCに向かって作業をしている。
しかも少し怒っている。
「ふたりとも変ですわ…」
野梨子は困惑して、ため息をついた。

 

        -2-


次の土曜日、悠理は待ち合わせ場所の駅で博人を待った。こんな風に待つための暇つぶしをする場所もないところで人を待つということは、ありえなかった。だいたい店の中など暇つぶしができる場所で待ち合わせる。
しかも初めてのデートで緊張してたせいか落ち着かず、10分も早くきてしまった。手には汗をかいていた。
「ごめんなさい、待たせてしまいましたね、悠理さん。」
それでもあんたは早いから。
だっていまは5分前。
悠理は慣れないシチュエーションに緊張し、心の声はダダ漏れにはならず「いや、そんなに待ってない・・・。」と小声で言った。
服で手を拭う。
なぜ、こんなに緊張してるんだ、あたし…。
悠理自身、戸惑っていた。ただの待ち合わせで、たいしたことをしているわけじゃないのに、すごく緊張してる。
「じゃあ、行きましょう。」
博人は悠理の手を引こうとした。
悠理は汗をかいてるのが恥ずかしくて素早く手をひっこめた。
「どうしました?」
「あたし、汗かいてるし。」
初めてのデートにもかかわらず、最初から手をつなごうとされたということに悠理は気付いておらず、博人は苦笑した。
「じゃあ」
そういってポケットからハンカチを出すと、悠理の手をとり、博人は悠理と自分の手の間にハンカチをいれた。
「これなら、気にならないでしょ」
そういうと悠理の手をつないで歩きだす。手と手の間のハンカチが僕と悠理さんの距離を表しているみたいだ、と博人はぼそりと呟いた。
一方、悠理は博人のぬくもりをハンカチごしに感じていた。
動物を扱うように悠理を触る皆とは異なり、こういう気遣いがとても新鮮だった。
映画館に到着する。
「悠理さんは動物が好きそうだったので、動物ものの映画を選んでみました。」
博人はさわやかに笑顔を向けると、事前に購入していたチケットを出した。
「ありがとう」
悠理はとりあえず、礼をいう。
アクションもののほうが好きだじょ・・・
心の中でつぶやく。
が、映画自体はとても面白いものだった。
悠理は感動し、わんわん泣いてしまった。
博人がはさんでくれたハンカチで涙を拭きながら。
そんな様子をみて博人は、悠理が素直でかわいいな、と思う。
映画を見終えたあと、イタリアン系のあまり高くないレストランに行った。結構OL風の女性が多いレストランで、高校生の二人はなんとなく浮き気味だった。
「客層がちょっと違いましたね。この店、姉から教えてもらったので。」
博人が苦笑する。
悠理はそうか?といいつつ、黙々とたべる。
「悠理さんはお兄さんがいるんでしたよね」
「そだよ。楯野川…さんは」
「博人で」
「えっと、じゃあ博人は?」
「うちには10個離れた姉と8つ上の兄と2つ下の妹がいます。姉と兄は母親が違います。姉達の母は亡くなったので。いま姉はOL、兄は父のサポートしてますよ」
「お姉さんは、普通にOL?」
「そうなんです。OLっていうのとは少し違うかな。実は外資系企業のエンジニアしてます。作業服着て仕事してます。今度、姉は悠理さんにあわせたい。なかなか面白い姉ですよ」
そういいながら楽しそうに笑う。
楽しそうに姉のことを話す博人を悠理はほほえましく感じた。
食事を終え、店を出て、ふたりは街をうろうろした。普段行かないような高校生が多い街に行く。
「悠理さん、こういうとこ、来ないでしょう。」といいつつ、苺のアイスクリームを手渡した。
「うん。」
清四郎や美童たちだったら銀座とか行きそうだった。
アイスクリームは甘くてひんやりしておいしかった。
ただちょっと自分のいる場所に違和感を感じていた。
--あたし、なぜ、ここにこの人といる?


---
2005.
(2017/4/5 加筆修正)

この話しは、一番最初に書いたものだったのですが、ボツネタ行になっていました。
展開がありがちなので。
ただ、今回、ちょっと直して、載せようかと…。

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