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みかんと惑星

有/閑/二/次/小/説/のブログです。清×悠メインです。 当サイトは、原作者様・出版社等の各版権元とは一切関係ございません。 最初に注意書きをお読みいただければと思います。

変わらない、場所 ⑬

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変わらない、場所 ⑬

約3週間ほど入院して僕は退院した。
胃潰瘍と肝炎は完治したが、メニエールは完治したわけではなかった。多少、めまいの症状が軽くなっていたが。
ストレスや疲れを溜めないようにするしかない。
僕は、まず豊作に会うことにした。
悠理のことを何か知っているようだったから。
僕は豊作に連絡をとった。
剣菱邸の豊作の書斎にくるように指示された。
メイドに案内されて、書斎に入る。
夜だったので、カーテンは締めており、ライトは少し落としてある。
「やあ。清四郎くん、久しぶりだね。どうだね?体調は。」
豊作の表情は意外と明るい。妹がいなくなったといっても、そんなに心配している風ではなかった。
「ええ、まあ。」
「何か飲むかい?。バーボンなら、ここにあるのだが、どうする?」
「いえ。お茶で結構です。車で来てますし。」
「そう。まあ、そこに座りなよ。立ち話もなんだから。」
そういいながら、ソファにかけるように勧め、メイドにお茶を頼んだ。
「僕はね、悠理が彼と別れてくれてよかったと思っているんだよ。」
ソファに腰掛けながらそういうと、豊作は手を組んで僕を見ながら苦笑した。
「別れたって、どういうことですか?」
寝耳に水だった。
豊作は笑う。
「ああ、ごめん。正確には未だ別れてはいない。悠理が失踪したことについては、マスコミには圧力をかけていたんだった。実は、悠理がね、離婚届を置いて、出て行ったんだよ。しかもね、悠理の子はあの旦那の子じゃないんだ。」
悠理の子は旦那の子じゃない…。
僕は血の気が引いていくのを感じた。
まさか…。
両手の指先が震え、僕は右手で左手を動揺を隠すように抑えた。
「両親がね、悠理の旦那に離婚届を見せ付けられて、そしてDNA鑑定書を見せられたんだ。僕はあとでそのコピーを見せてもらったけど、驚いたよ。全く親子関係がなかったんだから。」
豊作は苦笑しながら、続ける。
「びっくりしたよ。悠理が浮気だなんてね。そして、その子供を…、皆を騙して生むなんて。」
言葉を失った。
その浮気相手は清四郎本人だったから。
「あの旦那、なんて言ったと思う?」
豊作はおかしそうに言った。でも、目は全く笑っていなかった。
メイドがドアをノックしてお茶を運んできた。
豊作はメイドが去ってから、また話し始めた。
「離婚してやるし、このことは、つまり浮気をしていたことだね、黙っていてやるから、自分の会社に融資しろと言ってきたんだよ。勿論、両親は怒ってね、そんなはした金、すぐに出してやるから出て行けって。離婚届はその場で判を押させて、小切手切って、縁を切ったよ。彼の会社の経営状態、本当によくなかったみたいだ。」
豊作はふーっと、長いため息をついた。思い出すだけで苛々するのか、苦虫をかみつぶしたような顔をした。
悠理の両親は脅されていた、のか…。
だから…。
「おじさんとおばさんは、だから悠理を探さなかったんですか?。」
「そう。今、探し出したら、それこそ悠理も、剣菱もスキャンダルまみれになってしまいそうだったからね。融資した記事が週刊誌に載ってしまったから。だから、離婚届は、まだ出してないんだ。」
そう、だったのか…。
悠理と剣菱を守るため…。
全ては僕が悪いのに…。
悠理にちゃんと確かめもせず、インドへ行ってしまった…。
もし、ちゃんとあのとき確かめていれば、悠理に、そして悠理の周りの人々に辛い思いをさせなくとも済んだかもしれないのに。
辛い思い自体はするかもしれないが、ここまで大事にはならなかったかもしれない。
そう思うと僕の気分は沈んで行った。
「しかし、…。」豊作はお茶をすすると僕の方を見て言った。「悠理は誰の子供を生んだんだろうね。」
豊作の問いに僕は一瞬目を伏せ、そして豊作を真っ直ぐに見た。
豊作ははっとしたように僕を見る。
「まさか、…清四郎くんの子じゃないだろうね?」
豊作を見つめたまま、僕は頷いた。少し、唇が震える。
「おそらく、僕の子だと思います。僕は悠理のことを、愛しています…。」
僕は真剣だった。
愛しているという言葉に偽りはなかった。
豊作は息を呑み、ふっと小さくため息を漏らすと、僕を見て微笑んだ。
「そう。…君かもしれないんだ。君が義弟だったほうが、どれだけよかったか…。」
豊作は怒っても呆れてもいなかった。
ただ、静かに微笑んだ。


豊作を訪問してから2ヶ月が過ぎた。
もう、季節は春だった。
悠理の旦那の会社はとりあえず規模を縮小したようだったが、継続していたようだった。
そんな記事を雑誌で見つけた。
「ふうん。」コーヒーを飲みながら独りごちた。
窓辺に行き外を眺める。
悠理はこの広い東京の空の下にいるのだろうか…。
それとも、全然違う土地に行ってしまったのだろうか…。
探偵等を使い、悠理を探していたが見つからなかった。
手がかりが一切ない。
親戚・友人・知人、誰も悠理の居場所を知らなかった。
勿論、悠理の両親も豊作も知らない…。
毎日、何もせず、こうして空を見ている。
職にもつかず、一人暮らしのマンションで時々机の中から悠理の写真を眺めながらぼんやり過ごしていた。
豊作に会ってしばらくしてから、会社には辞表を出した。
めまいのほうは大したことはなかった。
でも、悠理が見つかるまで、職につきたくなかった。
僕の両親はただ職にもつかず、ぼんやりしている息子の不可解な行動にあきれ返っていた。
姉も最初は気にとめていたが、何か考えるところがあるのかと放置してくれている。
僕は悠理を見つけることが出来るんだろうか。
一体、どこに行ったんだ…。
頭の中は悠理のことしかなかった。
このまま会えなければ、本当に会えなければおかしくなってしまいそうだった。
どうすれば、いいんだ…。

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私の中では終わりが見えてきました。

(2006.02.26)りかん

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