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みかんと惑星

有/閑/二/次/小/説/のブログです。清×悠メインです。 当サイトは、原作者様・出版社等の各版権元とは一切関係ございません。 最初に注意書きをお読みいただければと思います。

つ や 肌

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つ や 肌

「絶対、あの二人、おかしいですわよ。」
「俺も、そう思う。」
春、新学期が始まった生徒会室で、清四郎が悠理の言うことを聞いているのである。
「清四郎、茶。」
そういうと、清四郎が「はい、はい。」と一瞬睨みつけながらも、お茶を運んでいく。
肩揉んでといえば、またもや睨みながらも、すぐににっこりして、肩を揉む。
普通、その逆だ。
なんで、こんなことが起こっているのか?
野梨子と魅録の二人は、彼らから少し離れた場所でお茶をすすりつつ、思っていた。
今日は美童と可憐がまだ現れていない。
二人はこの異常事態に二人だけで耐えなければならないのか?と思っていた。時々清四郎からかもし出される殺意。いつ、怒り出して大変なことになるのかと思うと気が気ではならなかった。
「なぁ~。今日、どこに遊びいく~?」
肩を揉まれている悠理が悠長に魅録と野梨子に声を掛けた。魅録と野梨子は顔を見合わせる。
窓に、桜の花びらが風に舞うのが、見えた。
「じゃあ、花見にでも、行きませんこと?ちょうど、桜も綺麗ですし。」
野梨子はここから逃れられるなら、どこでもいいや、とばかりに唇の端を引きつらせて微笑みながら、言った。
「そうだな。そうしよう。」
魅録が同意する。
「んじゃあ、そうするか。じゃ、清四郎。買出しよろしくな!」
悠理はそういうと立ち上がった。
「じゃ、魅録、野梨子、先に行くぞ!」
そういって、先に悠理は生徒会室を出た。清四郎がとてもとても恐ろしい表情で悠理を睨んでいたことなんて、、、。知らなかった。


事の発端は。
単に清四郎は悠理との賭けに負けただけだった。
二人で一緒に帰っていると、キャッチ風の女性に悠理が捕まった。
「ちょっとだけ、寄っていかれませんか?。今、美容にいいハーブティとおいしいハーブの入ったクッキーのセットをお出ししてますので。」
食べ物に釣られる悠理。目がきらりと輝く。
「悠理、帰りますよ。」
清四郎が嫌そうに引き止める。
「彼氏さんもご一緒にどうぞ。彼女の美しい姿が見られますよ。」
コホン…。
清四郎は咳払いをする。
「まず、彼女とは僕は付き合っていませんし、彼女が美しくなるなんて、ありえませんから。」
女性は困ったように苦笑した。
「あ、お友達でしたか。失礼しました。」
「いえ。さ、悠理、帰りますよ。」
清四郎は悠理の腕を引っ張った。
「い・や・だ。」
悠理は清四郎を睨みつける。
「あたしが美しくなるなんてありえないって、どういうことだよ!やってみなければわかんないじゃないか!」
「やってみなくともわかりますよ!」
「よし、じゃあ、あたしが綺麗になったら、明日一日、言うことを聞け!」
「ええ。いいでしょう。」
そんな訳で。
怪しいサロンに二人は足を運ぶことになった。

約1時間半、清四郎はぼーっとしていた。
訳でもなく。清四郎もフェイシャルエステを受けていた。
顔に蒸気を浴びながら、しなやかな指先で、マッサージを受ける。
ひんやりした指先が気持ちよかった。
(美童や可憐の気持ちがわかります。)
その後、パックをし、ローションとクリームを塗られた。
肌がしっとりとして気持ちよかった。
清四郎はそんな感じで一時間。
(僕も綺麗になりましたかね。何事も経験だとは思っていたけれど、エステがこんなに気持ちのいいものだとは思いませんでした。)
満更でもないようである。
その後、30分ほど、ハーブティとクッキーを食べて悠理を待った。
「ご友人の方、綺麗になりましたよ。」
そういって、エステティシャンが、清四郎のもとに微笑みながらやってくる。
少しして、悠理がやってきた。
ガタッ!
清四郎は椅子から転げ落ちるかと思った。
薄く化粧をされた悠理。肌はつやつやで、目元と口元が少し変化しただけなのに、とても綺麗に見えた。
「もとが綺麗だから、少し化粧をしただけでも、お綺麗ですよね。」
エステティシャンに言われ、清四郎は「ええ、…そうですね。」と思わず頷いてしまった。
(ここまで、綺麗になるとは…。)
鼓動が早まる。
予想外の出来事だった。悠理から、目をそらすことができなかった。
「あら、お友達も美しさに驚いて、声も出ないようですわね。」
エステティシャンがクスクスと笑った。
悠理がそんな清四郎を見て、にやりと笑った。
「さっき、お前、頷いたよな? って、ことは、お前、明日一日、あたしの言うこと、聞くんだぞ!」
勝ち誇ったように、言い放った。
清四郎がうかつだったと頭を抱えたのは言うまでもない。
でも、胸の鼓動は、高まったままだった。


満開の桜の下で、どこから手に入れたのかわからないブルーシートに座って、花見を始めた。
といっても未成年かつ学校帰りのため、ジュースとお菓子とだんごをたべながらである。
周りには平日のため、場所取りをしていて既に酔っ払っている、会社員がたくさん居た。
「うまいなぁ。清四郎。どこで買ってきたの?これ。」
悠理が尋ねると、清四郎はにっこりと微笑み「今度、教えてあげます。一緒に買いにいきましょう」と言った。表面上はにっこりしていたが、悠理に使われて、相当機嫌が悪そうだった。野梨子と魅録は清四郎の機嫌の悪さを感じとり、居心地の悪さに苦笑した。
楽しいはずの花見。しかし、野梨子と魅録の二人には、清四郎が恐怖に感じるだけで、全然楽しくはなかった。
「怖いですわよね。清四郎。」
「ああ、もう少ししたら、逃げるか。」
野梨子と魅録はこそこそと逃げる打ち合わせを始める。
悠理は能天気にご機嫌な様子で清四郎をこき使っているが、清四郎の動作一つ一つにムッとしていることが窺える。
野梨子と魅録はペットボトルのお茶とだんごを1串たべ終わったら、ここから逃げることにした。
野梨子がお茶を飲み終わって、ゴミの片付けをしたのを見計らうと、「ああ、そうだ。俺、今日、千秋さんが帰ってくるから、早く帰らないといけないんだった。」と唐突に魅録が言った。
「あ、そうでしたのね!。私も、千秋さんにお呼ばれしていたんでしたわ。それじゃ。」
「えっ、ちょっと…。」
戸惑う悠理を尻目に二人は早々に退散する。
ちなみに、千秋さんは今日帰ってくるかどうかもわからない。魅録の嘘である。
「いや~、怖かった。」
「ええ。いつ爆発するのかと考えたら、いてもたってもいられませんでしたわ。」
二人は恐怖から逃れられ、ほっとしながら、帰宅の途に着いた。が、途中、千秋さんにつかまり、拉致されていった…。


「帰っちゃったよ。清四郎。」
悠理は残念そうに、呟いた。
「そうですね。じゃあ、僕たちも帰りましょうか。」
「えーっ!だって、まだこんなにお菓子があるぞ!」
「家に帰ってから食べればいいじゃないですか。」
清四郎は冷たくいい放った。
悠理はがっかりした顔をする。
「だって、せっかくの花見のお菓子だよ…。」
そんな悠理の顔を見ていたら、”ほら、帰りますよ。”と強気ではいえなかった。
「じゃあ、このだんご、悠理が全て食べたら、帰りましょう。」
「うん。」
悠理は頷いた。
何時の間にか、いつもどおり、悠理が清四郎の言うことを聞いていた。その事実に悠理は気づいていない。

だんごを食べ終え、二人は帰宅の途に着くことにした。割と細い路地を二人で並んで歩いていた。夕日が二人の間に差し込んでいる。空が夕闇に包まれていく。電柱から長く影が延びていた。
「だんご、ほんとにうまかったよ。清四郎。」
「そうですか。」
「でもみんななんで帰っちゃったんだろうなー。」
「そうですね。」
清四郎はなんとなく理由はわかっていたが、そ知らぬ振りをした。
「でも、まっ、いいか。」
そう言って悠理は清四郎に微笑みかけた。
清四郎も釣られて微笑む。
夕日に悠理の顔が照らされる。
(肌がつやつやですね。手入れすれば、やっぱり、綺麗なんですね…。)
プニッ…。
「何するんだよ!」
悠理が驚いて、清四郎の方を振り返る。
清四郎は悠理の頬を無意識に押していた。
「いや…。すみません。」
そして即座に謝る。
「…別にいいけど。謝られるほどのものでもないし。」
悠理がそういうと、清四郎は苦笑した。
後ろから、クラクションを鳴らされる。道路の幅、ぎりぎりの大きさの車が通ってきた。
清四郎は悠理を引き寄せた。
車がぎりぎりに通り過ぎる。
「ったく、こんな狭い道、通るなよな!」
「ほんとですね。全く。」
清四郎は抱きしめていた手を緩めて、悠理の手を掴んだ。
「さて、早く帰りましょう。」
「そうだな。腹、ぺこぺこだよ。」
「あれだけ食べたじゃないですか。」
「うっさいなー。あれはおやつ。今から夕飯。」
「じゃあ、何か食べて帰りますか。」
「やったー!」
悠理は嬉々とした表情で清四郎を見つめた。
清四郎もにっこりと微笑む。
(手もマッサージしてもらったんですかね…。)
悠理は気づいていなかったが、ずっと、手は繋がれたままだった。



おわり

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2006.4.10(りかん)
ここから、始まる?一歩間違えると寒い冬シリーズになってしまう…。なので続かない(苦笑)と思う。

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