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みかんと惑星

有/閑/二/次/小/説/のブログです。清×悠メインです。 当サイトは、原作者様・出版社等の各版権元とは一切関係ございません。 最初に注意書きをお読みいただければと思います。

変わらない、場所 ⑦

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変わらない、場所 ⑦

僕は美弥と別れたあと、現在勤めている製薬会社の研究所をやめて、放浪の旅にでも出ようかと思っていた。
自分でも弱いなと思ったが、何もかも捨ててもう一度最初からやり直したいと思っていた。
辞表を出そうと思っていた、そんなある日、会社が提携しているインドの研究所に3年間派遣されることになった。僕は二つ返事で引き受けた。
とりあえず、やり直すきっかけが欲しかった。インドの研究所でも、なんでもよかった。
でも、最後に悠理の声が聞きたかった。それで、旅立つ前の日に悠理の携帯に電話をかけた。
コール3回で、悠理が出る。
『はい…。』
少しけだるそうな悠理の声。元気溢れる悠理の声ではなかったが、悠理の声を聞いて愛しくてたまらなかった。
「悠理。」
『…。』
「悠理…。」
もう一度、悠理の名前を呼ぶ。それ以上言葉が続かない。
電話口の向こうから悠理のすすり泣く声が聞こえてきた。
「悠理…。」
愛してる…。
言葉にはならなかった。溢れる思いを言葉にしてはいけないと思っていた。
暫く沈黙したあと、僕は「元気で…。」と低く呟くように言った。
電話の向こうで、『…どういうこと?』泣きながらハッとしたように言う。
「転勤で…。日本には暫くいないんです。」
『暫くって…。』
「3年くらい。インドに…。」
『美弥さんも、一緒に?』
悠理の問いに清四郎は戸惑った。
---悠理は別れたことを知らない。
「ええ。」
僕は僕自身が期待しないように嘘をついた。
『そうなんだ。』とがっかりしたような声を悠理は出した。
「悠理も、元気な子を生んでくださいね。」
『うん。』
「行く前に、悠理の声が聞けて、よかった。ずっと、声が聞きたかった…。」
悠理は暫く沈黙していた。
『…思い出したのか?あの日のこと。』
声が震えている。
僕は黙っていた。思い出したと言ったところで何も変わらない。変えようがない。
『…あたしは、声だけじゃなくて、…清四郎に会いたい。今すぐ、会いたい…。』
溢れる涙を止めることができないようだった。嗚咽が上がる。
傍にいたら、抱き締めるのに…。抱きしめたい…。
僕は胸が締め付けられる思いがした。
「さよなら、悠理」
僕は吐き出すように言うとと電話を切った。
悠理の泣きじゃくる声が耳に残った。
”あたしは会いたい…。”


あたしは清四郎の電話を切ったあと、寝室に篭って泣いた。そのまま居間にいてもよかったのだが、居間で泣き続けることはできなかった。旦那がいつ帰って来るかわからなかったから。寝室が別でよかったと思う。
3年もインドに行く清四郎。
転勤なんかしないで、一緒にいてほしい。
そういいたかったけど、彼には彼女がいる。
でも、声が聞けただけで嬉しかった。けれど声を聞けば会いたくなる。会いたい。会いたくて身が引き裂かれそうだった。
会って”愛してる”といって抱きしめたかった。
強く抱き締めて貰いたかった。
今の自分にそういう権利がないことがわかっているから、余計に辛かった。
もし美弥さんがいなかったら。…あたしが結婚をしてなかったら。…子供が清四郎の、、、。

あの電話以来、あたしは清四郎のことばかりを考えていた。
会いたくて、すぐにもインドに行きたかった。
あたしの旦那はあたしが出産が怖くて動揺しているのかと勝手に思い込んでいたので、優しかった。
それが余計にあたしに罪悪感を感じさせた。
どちらの子かも、わからないのに…。
そして、電話から5日後、破水して陣痛が始まった。
病院の特別室に入院した。両親がまるで祭でもあるかのように興奮している。旦那は仕事で来られなかった。
あたしは旦那がいなくてちょっとほっとしていた。
10時間経ち、やっと子供が生まれた。
生まれたときに、ふとよぎったのは、清四郎の笑顔だった。
”無事に生まれてよかった…。”
”うん…。”
心の中で呟く。
看護師があたしに子供を見せた。
「元気なかわいい女の子ですよ~。」
看護師は笑顔を浮かべた。
あたしは「よかった」と言った。でも次の瞬間、硬直した。
どうして、この子はこんなに髪が黒いんだろう…。
あたしも旦那も髪はこんなに黒くないのに…。
清四郎との子供だと言われている気がした。
だから、清四郎の顔が、よぎったのかもしれない…。

あたしの隣にベッドが容易される。
来る人来る人が子供の顔を見てかわいいねといっていく。確かに顔立ちがはっきりしていて美人になりそうな顔をしていた。
この子は…。旦那の子じゃない気がする…。
見れば見るほど旦那に似ていない気がした。旦那はそれを気にする風でもなく、美人な子だといって喜んでいた。
「悠香(はるか)にしよう」と。あたしみたいに美人になるようにという名前らしかった。が、兄貴に「悠理に似たら、頭が悪くなる」と却下され、「青佳(はるか)」とされた。
あたしはこの名前を聞いて、即、OKを出した。
清四郎の「清」の一字を使っているような気がして、なぜか、その名前をつけられることが運命だったような気がした。
あたしと子供の退院の際も旦那は会議があったため両親が付き添った。
両親が来る少し前に看護師さんに「まだはっきりはわからないんですけど」と前置きされ、「A型みたいですよ。お子さん。」と言われた。
---A型…?。
---かあちゃんも旦那もBなのに、A?
なぜかA型の子が生まれることが、不思議な気がした。
そして、このことは家族には伏せていたほうがいいような気がして、両親と旦那には黙っていた。


---
 悠理の血液型を御存知の方は、おわかりですよね(笑)
因みに悠理ちゃんは百合子が関わらないってことはわかりません。
以前、会社の先輩(AB)が、旦那がOでその人たちの子供がAだったんですけど、旦那の父がAだからAの子が生まれたといっていました。
なんとなく、それを思い出してしまいました。

(2006.02.12)りかん

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