忍者ブログ

みかんと惑星

有/閑/二/次/小/説/のブログです。清×悠メインです。 当サイトは、原作者様・出版社等の各版権元とは一切関係ございません。 最初に注意書きをお読みいただければと思います。

変わらない、場所 ⑤

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。

変わらない、場所 ⑤

皆が先に帰って、僕は夕食をとり美弥とともに病室にいた。
「僕は2日間、何をしていたんでしょうね。」
「さあ、わたしは知らないわ。あなたは出張から直接ここへ向かったのよ。それから、ここでは停電があったわ。それはニュースでやってたから知ってたけど、それ以上はわたしにもわからないわ。」
美弥は首をすくめて微笑んだ。
美弥が知るはず無い…。
聞くだけ聞いたのに答えてくれようとしたのが僕には嬉しかった。
「少し眠くなったから寝るよ。」
そういうと美弥はこくりと頷いた。
「思い出せれば、いいわね。この2日間。」
「そうですね。」
僕はそう言って眠りについた。
美弥は僕の寝ている間にホテルへと帰っていった。

明け方、僕は悠理の夢を見て目が覚めた。
夢の中で悠理は”行かないで”と言って泣いていた。昨日の寂しげな顔と重なる。
僕は…。一体…。
布団からガバッと起き上がった。
全身に汗をかいている。
僕は手で額の汗を拭った。
頭の中を整理して順を追って思い出そうとする。
---管理人から、鍵を借りた。
---それから、悠理が来て、二人で買いだしに行って。
---そして、停電。
---寒くて…。
---僕は悠理を…。
---抱いた!
思い出される匂い、悠理に触れていた感触。肌にかかる吐息…。悠理の僕に対する思い。そして、僕の中から溢れ出す恋情。
悠理…。
触れたくて、恋しくて、たまらない思いがした。
僕が出て行く間際の不安そうな顔をした悠理に口づけたことまで思い出した。
僕は一刻も早く悠理に会わなければならないと思った。
酷いことをしてしまった。
いくら覚えていなかったとはいえ、あんな風に愛し合ったのに、僕は悠理を見ようとはしなかった。
見つめてしまったら抱きしめてしまいそうで、というのではなく、抱きしめてしまうのが、自然だった。
抱きしめなければ、ならなかった。
思い出してしまった以上、美弥と一緒にいることは出来なかった。酷い男だとは思ったがこのままでいるほうが余程不誠実だと考えた。
美弥とは、もう終わらせなければならない。
こんな気持ちで一緒にいることはできない。
ただ、ここまできてもらって、人として、ここで別れを告げるわけにもいかないため、僕は東京に戻るまでは何も言わないつもりでいた。
僕の頭の中は、ちょっと気を抜くと悠理のことしか考えていなかった。
悠理に会いたくて、会いたくて、このあと一睡も出来なかった。

翌朝、美弥が迎えにきて、一緒に帰路に着いた。一度悠理への恋情に気付きそして思いが通じてしまったら、美弥が隣にいること自体に違和感を感じてしまった。
何を話しても会話が空回りしてしまう。
どうして、彼女が僕の隣にいるんだろう?
ふと、そんなことまで考えてしまう。
よくよく考えれば、悠理は結婚している。
それでも僕には悠理が必要だった。
悠理も僕を必要としているはずだった。
だから、きっと悠理は僕といることを選ぶはず…。
そんな風に思っていた。
しかし、家に着いて一人になってから、悠理の携帯に電話をしたが誰も出なかった。その後、一応家にかけたが、家政婦に「ご実家に戻られてます。」と言われた。仕方ないので、剣菱邸に電話を掛けたが、「お嬢様は大奥様とパリへでかけております。」と言われた。「いつ頃帰宅しますか。」「1か月後の予定です。」
1か月…。
長いな…。
でも、その間に、僕は彼女とは別れよう。
そう決心していた。

結局、僕は悠理に連絡をとることができなかった。
悠理は携帯に無頓着なため、海外で繋がる携帯を持っているわけではなかった。
最新機種を持っていたとしても使いこなせない。
僕は半ば連絡とるのを諦めていた。
やっと、悠理が帰国したとわかったのはそれから1か月半が過ぎた頃だった。
その間、僕は美弥と別れ話でもめていた。
彼女が言うには、僕の理由が不明確だというのだった。
ちゃんと理由を話してくれるまで、別れない、と言われた。
僕は悠理のことを言えなかった。
あの日、入院先で、誤魔化してしまった手前、”悠理のことが好きだから、別れてほしい”とは。
そして、迎えにきてもらったのに、実は悠理のことが、とは言い出しにくかった。

僕は美弥と堂々めぐりしていた別れ話に辟易しつつ、実家に行った帰りのことだった。夕飯を実家で食べて、その後自分のマンションに戻るところだった。
偶然、実家にいた野梨子と出くわした。野梨子も一人暮らしをしており、珍しく家にいたらしかった。たまたま、近くのコンビニに買い物にいった帰りだったらしい。
「あら、清四郎。もう大丈夫ですの?」
「ええ。まあ。」
「そう。あのときは心配しましたわ。まさか清四郎が記憶がなくなるなんて。もう、戻りましたの?」
「だいたいね。落ちてから、助けてもらったところは覚えてないんですけど。」
「そう。でも、戻ってよかったですわ。そういえば、あのとき一番狼狽していたのは悠理でしたわね。悠理には連絡とりましたの?」
僕は悠理という言葉が出て、どきりとした。
「まだです。悠理は日本にいないんじゃないですか?」
さりげなく聞いたつもりだった。
自分の恋情がばれてしまわないように、細心の注意を払って。悠理という言葉一つにも、自分の気持ちが表れてしまいそうだったから。
「まぁ、そうですの。あ!、そういえば、知ってます?清四郎。悠理に子供が出来たらしいですわ。」
野梨子が思い出したことが嬉しそうに、言った。
えっ…。まさか…!。
確かに避妊はしなかった。
喉がカラカラに渇く。
「それは、本当ですか。」
やっとの思いで言った。
「本当ですわ。」
野梨子は本当に嬉しそうに言う。
「先日悠理のご主人にお会いしたときに、嬉しそうに話しておりましたのよ。今度お祝い会を開くらしいですわ。」
「そうですか。」
旦那の子…。僕の子ではないのか…?。
「清四郎、何を落ち込んでおりますの?清四郎にだって、美弥さんがいますでしょ。美弥さんと早く結婚なさればよろしいのよ。」
僕は微笑んだ。別れ話をしている美弥とは結婚できない。でも、悠理は旦那の子を身篭っている。
僕のものにはならない…。

---
もうちょっと長めにしようと思ったのですが、一度切ることにしました。
(2006.02.11)りかん
PR

コメント

ただいまコメントを受けつけておりません。

プロフィール

HN:
りかん
性別:
非公開

P R

忍者カウンター