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みかんと惑星

有/閑/二/次/小/説/のブログです。清×悠メインです。 当サイトは、原作者様・出版社等の各版権元とは一切関係ございません。 最初に注意書きをお読みいただければと思います。

ラブストーリーは…突然に 3

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ラブストーリーは…突然に 3

僕は昼過ぎに、悠理に謝るためのケーキを持って、五代が教えてくれた住所に向かった。
当直していたのにもかかわらず、なぜか気分が高揚して、眠れなかった。
そして、悠理のマンションに向かっている最中、悠理がマンションにはいないかもしれない、とはなぜかその時には思わなかった。
悠理はマンションにいる、と確信していた。
マンション着いて、エントランスで、オートロック操作盤から悠理の部屋を入力した。
最初、何も反応がなかったが、風除室のドアが開いた。
入れてくれるらしい。
ほっとする。
僕が部屋の前まで行くと、悠理が部屋の前で立っていた。悠理は相変わらずスーツを着ていた。昨日のスーツとは違う。
明るい黄色のスーツを着ているのに、その表情とは裏腹にとても疲れていた。
「悠理、昨日はすみませんでした…」
僕がそういうと、悠理は僕の顔も見ずに「中に入っていいよ」と悠理は言って、ドアを開けた。

悠理の部屋は、こぎれいに片付けられていた。
シンプルな木目と白で統一された部屋だった。悠理のスーツの色以外、取り立てて、色のない部屋だった。
剣菱邸にいたときとは違う。
天蓋のついたベッドなどはない。
僕は白い質のよい革張りのソファの上に座ると、悠理にケーキを差し出した。
「ありがとう。コーヒーいれるわね」
そう言って、悠理はコーヒーをいれてくれた。
「ひどいことを言って、すみませんでした」
僕は悠理が向かい側に座ると、そう言って、謝った。
悠理は弱々しく微笑むと、「いいの」と答え、コーヒーに口をつけた。
僕の持ってきたケーキを皿にうつし、僕の前におく。
「君の、代議士先生は、虫垂にバリウムが入りこんだのが原因で、炎症を起こしてしまったので、盲腸と同様の手術が行われたそうですよ」
「そう」
悠理は自分の前のケーキに浮かない顔でフォークを刺した。
「たいしたことはないので、すぐに復帰できるはずですよ」
「うん」
悠理はフォークで切ったケーキを口にいれずに、そのまま、置いた。悠理は僕を見つめた。何か言いたそうだった。
「どうかしましたか?」
少しためらいがちに、悠理は口を開いた。
「清四郎が…、察していたとおり、わたしと先生は、不倫の関係にあるの」
悠理はコーヒーを口に含む。こんなことは、本当は言いたくないことだろう。
「父のグループ企業のうちのひとつの会社が、問題を起こして、彼のお父様に、救ってもらったの。そこで、わたしは彼の秘書として働くことを条件とされたの。彼の父は、わたしを彼の妻にしたかったから…。そうすれば、うちの親と強固な関係を築けるでしょう」
悠理は視線を下に落とした。
「わたしは彼を好きでも嫌いでもなかった。強姦に近い形で、彼に抱かれたの。わたしは、彼が初めてだった」
口ごもりながら悠理は言う。
魅録とてっきりそういう関係にあったと思っていたが、違ったのか。
なぜか僕は安堵する。
彼に強姦された、否、強姦に近い形で奪われたことのほうが罪が重いとは思うが、魅録を愛していて、魅録と合意の上で、そうなったほうが、僕にはつらいことだった。
魅録に気持ちがあるほうが、嫌だったのだ。
嫌な男だと思う。
「何度も何度も彼に抱かれたら、わたしは彼に頼るしか無くなっていた…。嘘でも、愛していると言われていると、心地がよかった。そんなわたしの生活は、何もかもが、変わらざるを得なかった。でも、そのころ、彼には妻がいたの。今の奥さんではないわ」
僕の顔を見て、苦笑する。
「離婚が成立して、少し期間をあけたら、彼は私と結婚する予定だった。けれども、なかなか離婚が成立しないばかりか、別の女性を愛して、離婚が成立すると、彼女と結婚したのよ」
「悠理ではなく、新しい妻に気持ちが移ってしまった?」
悠理はうなずいた。
「もう、わたしは彼無しではだめになってしまったの。彼のために生活を変え、勉強して…。それを知ってるから、彼は平然と他の女に傾いたのよ。私が彼から離れることはないという前提が、彼の中にはあったの」
「ひどい男ですね…」
弱みに付け込むなんて。
卑怯だ…。
悠理は僕の顔を見て、クスッと笑った。
「今の奥さんは、わたしが彼と付き合っていたのは知ってるから、わたしを毛嫌いしている。当たり前よね」
前の女…、いや、今でも続いている女が、秘書をしていたら、それは嫌だろう。
「別れるつもりはないんですか?」
「別れられるんだったら、別れてるわ…」
悠理はケーキのフォークを皿においた。
「別れられるのなら、今すぐにでも…」
立ち上がり、窓の方に向かう。
入り込めない、何か…。
僕は悠理に近づけないでいた。
悠理はカーテンに手をやり、ずっと、外を見ている。
まるで、僕の存在なんて、なかったかのように。
それに耐え切れず、僕は言った。
言うつもりは毛頭なかったのに。
僕は悠理のそばに行き、肩をつかんだ。
「悠理…!」
「どうしたの?清四郎…、怖い顔をしているわ」
悠理は僕をはぐらかそう、僕に笑いかけた。
「あのとき…、お前にキスをされてから、僕はお前のことが好きなんだ!」
目を見開いて、僕を見る。動揺が、みるみるうちに顔に広がる。
僕の心臓も、飛び出しそうなくらい、ドキドキしている。
「何を言ってるの?」
「僕の頭の中は、あれ以来、ずっと、お前のことしか考えられない…。代議士と別れて、僕と付き合ってほしい…」
興奮しすぎて、僕の顔は悠理の顔に触れる勢いだった。
このまま、抱きしめてしまいたかった。
「清四郎、やめてよ…!!」
両手で、強く押し返される。
悠理は視線をそらして、僕の手を肩からはずした。
「あのキスは、清四郎に会えたのが、嬉しくてしただけよ…。何の意味も…」
窓の外を見ながら、悠理は言った。
その横顔は、辛そうだった。
僕は悠理を困らすために言ったんじゃない。
「悠理、本当に僕は…!!」
お前のことが、好きなんだ。
そう言おうとしたら、遮られた。
「清四郎、雨が降ってきたわ…、そろそろ帰ったほうがいいわ…」
その声は冷たく、震えていた。
今にも、泣き出しそうだった。
これ以上は何もいえない。
僕はそうだね、とうなずくと、そのまま悠理のマンションを出た。
雨は弱く細かく降っていた。
部屋を出るときに、視線を合わせずに渡された、ビニール傘をさす。捨ててくれと言われた傘だ。
きっと、返しにきてほしくないということだろう。
僕は数mほど歩き、悠理の住んでいる部屋を振り返る。
悠理を困らせるために、来たんじゃない。
悠理に僕の気持ちを伝えるために、ここに来たわけではなかった。
その泥沼から救いたかったんだ…。


悠理のことで、悶々としたまま、数日が過ぎた。
例の代議士が退院する。
悠理が来るのではないかと、僕は何度か、悠理が立ち寄りそうなところをうろうろした。
けれども、悠理は現れなかった。
そんな、都合よく現れるはずはない…。
そう思っていても、やっぱり、どこかで会えることを期待していた。
会いたかった。
一目でいいから、僕は悠理に会いたかった。

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(2008.1.8)本当は、ここで告白させるはずじゃなかったんですけど、いつまで経ってもそれじゃ終わらないから半ば強制的に、清四郎に
告白させてしまいました(汗)


(2008.2.11up)諸事情により、アップが遅くなってしまいました・・。すみません。
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