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みかんと惑星

有/閑/二/次/小/説/のブログです。清×悠メインです。 当サイトは、原作者様・出版社等の各版権元とは一切関係ございません。 最初に注意書きをお読みいただければと思います。

ラブストーリーは…突然に 2 

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ラブストーリーは…突然に 2 

僕と倫子と他2人の同僚と4人で飲みにいった。
飲みたかったのは、倫子と同僚の一人で、単にだしに使われただけだった。
倫子と同僚と一次会で別れて、僕はタクシー乗り場に向かった。
こんな日は電車で帰る気がしない。
疲れた…。
重い足取りで歩いていると、僕の脇を悠理がとおり過ぎて行った。
「悠理!」
声をかけると、悠理は振り返った。
「清四郎…」
驚いたような顔をしている。
「びっくりしたわ…。わたしだって、よくわかったわね?」
「ええ、まあ…」
ほんとに、よくわかったものだ…。
自分でも言われてびっくりしている。
「まだ仕事ですか?」
問いかけると、悠理は困惑した表情を浮かべた。
「清四郎は?」
僕の問いに答えずに、聞き返す。
「僕は飲んでました」
「そうね、少し酔ってる気がするわ」
くすりと悠理は笑う。
そして、僕に歩くように促した。
悠理と一緒にいるのに、悠理じゃない…。
今の悠理を否定するわけじゃないが、違和感を感じる。
確かに、女性としては、合格だとは思うが…。
「悠理…、変わる必要なんて、ありましたか?」
僕は酔った勢いで、聞いていた。
悠理がまた困惑した表情を浮かべる。
「変わったのかしら?…中身は変わっていないつもりだけど、変わらざるを得なかった、といったほうが正しいかもしれないわね」
「それは、秘書をやっているから、ですか?」
「それもあるわね」
僕から少し悠理は距離をおいて歩いている。
近くにいるのに、近くにはいない気がした。
僕たちの間には、見えない壁がある。手を伸ばしたくとも、伸ばせない。
「じゃあ、ここで」
悠理はにっこりと僕に微笑んだ。
その笑顔は、少し、寂しげだった。
そして、そこは都内でも有名なホテルの前。
「どうしてここで?君がここに行く必要なんてないじゃないか?」
まるで、僕は駄々っ子のようだった。悠理の手をつかむ。
悠理に、この中に入って欲しくなかった。
「行かなくちゃ、いけないの」
悠理は悲しそうな顔をして僕を見た。そして僕の手に、悠理の手が触れる。
その手は、ひんやりしていた。
悠理は僕の手を解いて、中に入っていく。
僕は悠理の後姿を見送った。
悠理を困らせて、どうするんだろう?
悲しい表情をさせて…。
切なくなった。
僕はため息をついて、ホテルを背にする。
黒い車がホテルの敷地内に入っていく。
振り返り、僕はその車を見た。
中から、40代半ばの男が降りた。急ぎ足で、ホテルの中に入っていく。
あの男は…。
よく知っている男だった。
元弁護士で、イケメンの代議士として有名な男だ。
この代議士の父親も代議士だったはずだ。
もしかしたら、そのつながりで悠理がこの男と知り合ったのかもしれない。
この代議士の父親は、国土交通大臣だったはずだから。
この代議士は、現在、再婚をしていたはずだ。僕の勤めていた病院の看護師と。
もちろん、彼が入院をして、そこで知り合ったのだった。
彼らの結婚式のときに、僕は看護師側で呼ばれて、出席をしていた。
相手は、僕に気づいてはいなかった。

なんともいえない複雑な心境…。
あんな男と悠理が?
気持ちが暗くなる。
胸がしくしくと痛む。
心臓血管外科医を目指している僕が、心臓病だろうか?
と、思ってしまうくらい、切ない気持ちが僕の胸を締め、つらい気持ちにさせた。
こんな現実、知らないほうがよかった…。
悠理と逢わなければよかった…。
僕はさらに重い足取りで、タクシー乗り場に向かった。


あの日以来、僕の心は晴れなかった。
悠理が不倫…。
悠理も女だったんだ、と強く認識させられた。
どんな表情をして、あの男に逢うんだろう。
そして、抱かれるんだろう。
そんなことを考えてしまっていた。
考えても、仕方がないことなのに。

それからほどなくして、また悠理と会う機会があった。
僕の病院で、だった。
「清四郎…」
僕が手術を終えて、着替えて医局に戻ろうしていたときに、後ろから声をかけられた。
「悠理…」
すでに、深夜近い時間だったが、髪をアップにし、きちんとスーツを着ていた。
僕は思いかけず、悠理に声をかけられて、心が、浮き立つような思いがした。
手術で疲れていた気分が、吹き飛んでしまうような。
でも、そう感じたのは、一瞬だけだった。
夜遅くに暗い表情をした悠理を見たら、一瞬にして、冷静な気分になってしまう。
周りを見回すと、悠理の他には、誰も近くにはいなかった。
「どうしたんです?こんな時間に」
「先生が…、入院したの」
不安げな表情で、言った。
「先生って?君が秘書をしている?」
悠理はうなずいた。
「清四郎、この病院の医師でしょう?先生の具合を聞いてくれない?」
「嫌ですよ。自分で担当医に聞けばいいでしょう」
僕は素っ気なくに答えた。
あの男のことを気にする悠理が許せなかった。
いや、悠理が許せないというのではなく、僕の嫉妬だ。
僕の嫉妬…。
どうして?
「…清四郎、お願い」
悠理は頭を下げた。
「どうして?秘書なんだから、直接担当医師か家族に聞けばいいじゃないですか」
「わたしは公設秘書じゃない…」
悲痛な表情をした。
「私設秘書でも疚しいところがないのであれば、聞けるでしょう?普通に」
とてもいらいらした気分にさせられる。
「清四郎、わたしの立場をわかっていて、そういうことを言ってるんでしょう?」
僕の悪意…いや、嫉妬に悠理が気づいた。
悠理は怒りを含んだまなざしで、まっすぐに僕を見つめた。
どうして、お前にそんな目で見られなければならない?
「じゃあ、聞くが、あの日僕にしたキスは何のためだ?僕をからかうためか?自分のその立場の不安定さに…」
悠理に思い切り、頬を叩かれる。
「お前、最低だな!」
悠理は涙を浮かべて、走って出て行った。
昔の悠理を見た気がした。
そのことに少し安堵する自分がいた。
けれども悠理にひどいことをいってしまったという後悔の念が襲ってきた。

あの男は消化器外科に入院した。
虫垂にバリウムが溜まって、炎症を起こしかけてるという話だった。
ちゃんと、調べて、病状も聞いた。
僕は翌朝、悠理の家、剣菱邸に電話をかける。
五代が悠理の携帯と住所を教えてくれた。

---
(2007.12.9)もう少し書こうと思ったんですけど、ええと、ちょっと続かなかったです。
バリウムが虫垂に入りこむと、痛いらしいです。
レントゲンにきらりーん☆と、バリウムの影がうつるらしいです。
でも、炎症を起こさないと、手術はできないらしいですよ。
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