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みかんと惑星

有/閑/二/次/小/説/のブログです。清×悠メインです。 当サイトは、原作者様・出版社等の各版権元とは一切関係ございません。 最初に注意書きをお読みいただければと思います。

ラブストーリーは…突然に 4

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ラブストーリーは…突然に 4

気づくと、僕は悠理のマンションの前にいた。
見上げると悠理の部屋には、電気がついていなかった。
「いませんか…」
落胆する。
約束もせずに、ここまできているのに、落胆も何もあったものじゃない。
「クッククッ…」
自分の考えなしの行動に自嘲する。
こんなことをする人間ではなかったのに…。
自分が抑えられない。
悠理は、今頃、あの代議士と会っているかもしれない。
退院祝いに。
あの、ホテルで…。
考えるだけで、胸が詰まる思いがした。

僕は踵を返した。
つらかった。

「清四郎…?」

えっ…。
振り返ると、そこにあの日と同じ、白いコートを着た悠理がいた。
「どうして、ここに…?」
不思議そうに僕を見た。
「…仕事だったんですか?」
悠理は僕の顔を見て、クスリと笑った。
「仕事は、今日で辞めてきたの」
「えっ…」
「そんなに驚いた顔をしないでよ。もう、全て終わりにしてきたのよ。彼と彼の奥さんの前で、終わらせてきたの」
いたずらっ子のような笑みを浮かべた。
「ありがとう、清四郎」
悠理は僕の手を取った。
顔が、熱くなる。
高校生のころは、普通に触っていたはずなのに、大人になった悠理に、しかも、僕か惹かれてしまった悠理に手を取られると、恥ずかしいというか、照れくさいというか…。
ずっと触っていたいが。
「清四郎」
悠理は優しい声で、僕に呼びかける。
その声に、また、ドキッとする。
「あのとき、来てくれて…、わたしのことを好きと言ってくれて…、本当にありがとう」
はにかんだ笑みを浮かべる。
「来てくれなかったら、まだ、わたしはあの泥沼の奥底に沈んでいたわ。突然だったけど、あの清四郎の言葉が、わたしの力になったの…」
「悠理…」
「もう、こんな自分らしくないこともやめる。元のわたしには完全に戻れないけれど、自分らしさを取り戻していくわ」
とても綺麗な笑顔だった。
あの男がいなかったら、もっとのびのびと生活していたかもしれないけれど、こんな悠理も悪くない。
光がさした悠理の笑顔は、見ているほうも、清々しかった。
「清四郎、満足そうな顔をしているわ」
おかしそうにクスッと笑い、悠理は言った。
「部屋に入る?コーヒーくらいしかないけど」
「いいんですか?」
「ええ」
ずっと、悠理に手を握られていた。
そのまま、手を引かれて、マンション内に入る。
悠理はオートロック操作盤に近づき、ICカードキーを操作盤にかざしながら、僕の顔を見ずに、言った。
「高校生のとき、わたしは清四郎のことが好きだったのよ」
「えっ…」
思いがけない言葉に、心臓がとまるかと思った。
「どういうことですか?」
「卒業式の日に気づいたの」
「卒業式の日?」
「ええ…、ドアが開いたわ」
何事もなかったかのような顔をして、悠理は僕の手を引き、風除室のドアが開き、エントランスホールの中に入った。
ずっと、手をつながれている。
突然の告白と、そのことで、僕は心不全を起こしてしまうのではないかというほど、ずっと、どきどきしっぱなしだった。
エレベータの前にきた。
僕は話の続きが聞きたくて、悠理に促した。
「卒業式の日とはどういうことですか?」
「答辞を読んでる清四郎を見ながら、思ったの。もう、今までと同じ生活はできないって、気づいたときに、すごく切なくなったの。そして、気づいた…。わたしは清四郎が好きだった、て」
僕をまっすぐに見つめた。
「あのときのキスは…、そのことを思い出して懐かしかったというのもあるけど、本当はわたしを救ってほしかったの。高校生のときのように…」
はにかんだ笑みを浮かべる。
「悠理…」
どう言っていいのか、わからなかった。
僕は高校生のころ、悠理のことなんて、ただのペットとしか思っていなかった。
でも、悠理は僕のことを好きだった。
そして今、僕が悠理に、恋をしている。
エレベータが、降りてきて、開いた。
悠理が自分の住んでいる階を押す。
僕は呼吸を整えた。
悠理の手をぎゅっと握りしめる。
「清四郎?」
驚いたような顔をする。
「悠理…。もし、戻れるのなら、卒業式のころの悠理の気持ちに戻ってもらえませんか?」
プッ…。
自分でも、何を言ってるんだ、と思ったが、悠理にふき出された。
そしておかしそうに笑う。
「清四郎、それって、変だよ…。戻れるはずないじゃん」
僕が一所懸命に告白したのに…。
「そんなにムッとするなよ。でも、おかしすぎて、おなかが痛い」
悠理がひとしきり笑うと、エレベータがとまり、扉が開く。
悠理は降りながら、僕を振り返った。
「改めて、清四郎のことが、好きになりそうだよ」
僕はその言葉が嬉しくて、悠理を抱きしめた。
と、その瞬間。
「いっ・・・!!!」
僕は悲鳴に近い言葉をあげた。
扉が、しまりかけて、僕の足が挟まれた。


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(2008/1/10)
やっと終了しました。
やっぱり、最後はこんな感じで(苦笑)
清四郎が、かっこよくなくて、すみません・・・。

(2008/2/16)
そして、アップ放置、すみません・・。
補足:この話は、小田さんの       「あの日 あの時 あの場所で 君と会えなかったら
       僕等はいつまでも 見知らぬ二人のまま」
      「誰かが甘く誘う言葉に もう心揺れたりしないで」
       の部分をモチーフに書いてます。
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