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みかんと惑星

有/閑/二/次/小/説/のブログです。清×悠メインです。 当サイトは、原作者様・出版社等の各版権元とは一切関係ございません。 最初に注意書きをお読みいただければと思います。

9月の花火

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9月の花火

3年生の文化祭、9月上旬の後夜祭のときだった。
全校生徒が体育館で騒ぎ、その後、校庭に出て、花火を鑑賞する。
椅子を準備して座るわけではないので、皆、シートに体育すわりをする。
当たり前のように、清四郎は悠理の隣に座る。
悠理の隣には、魅録、そして、野梨子、可憐、美童と続く。
なんとなく、清四郎が悠理を好きなんじゃないかな、ということを他の4人は感じていたが、当の悠理本人はのらりくらり。
気があるのか、ないのか、さっぱりわからない。
それどころか、最近は悠理が清四郎を避け始めている気さえしていた。
清四郎の恋は前途多難だな、と4人はそれぞれに思っていた。

今日も普通に魅録の隣に腰掛けて、その隣に清四郎が座ったという形だった。
ドドーンという音とともに、スターマインが上がる。
「悠理、綺麗ですね。」
「ああ。」
清四郎に話し掛けられるも、そっけなく悠理は答えていた。
最近、清四郎に見つめられるのが、ちょっと辛いと思っていた。
実は悠理は清四郎のことが好きだった。
見つめられるのが辛いのは、自分が、清四郎のことを好きだということを分かられていそうだったからだ。
悠理からすれば、清四郎の気持ちなんて、全然読めていなかった。
清四郎が好きだから悠理を見つめている、という意識が皆無だったので。
そして、誰にも自分の気持ちを悟られないように、いつも、清四郎のほうは見ないように、なるべく魅録と一緒にいたりしていた。
実は清四郎の傍にいるだけで、心臓がバクバクしていた。
今日も本当は、自分が一番端で、清四郎とはなるべく遠く離れて座りたかった。
でも、あたり前のように、清四郎は悠理の隣に腰掛けた。
気まずくて、「魅録、…。」と話し掛けようとしたとき、魅録は野梨子の横顔を見つめていた。
そんな魅録の様子に話し掛けてはいけない気がして、夜空を見上げる。
☆の形をした花火が上がる。
流れ星をかたどって、尾ひれがつく。
風で煙が流れているので、わりと綺麗に花火が見える。
「悠理。」
また、声をかけられる。
「何?」と一瞬、横を見て、また目をそらす。
「ハートの形の花火があがりましたね。」
「うん…。」
膝を抱えながら、夜空を見つめる。
「…来年は学校の花火を見ることができませんね。」
全然、清四郎の方を見ない悠理に向かって、清四郎が静かにいった。
「そだな…。」
清四郎は悠理の腕を引いた。
悠理はちょっと驚いて、清四郎を見る。
「やっと見ましたね。」
そういって、清四郎は周りに聞こえないように、小さく笑った。
悠理はみるみる赤くなかった。
たまたま、赤い花火があがっていたので、清四郎には気づかれなかったが。
「じゃあ、来年は、二人でどこかの花火を見にいきましょう。夏に。」
こっそり、言う。
コクン、と悠理は頷いた。
内心、ヒーッと火を噴きそうだった。
二人で、花火、だなんて…。
バカなあたしでも、誤解するよー。
そんな心境だった。
「約束ですよ。」
そういって、指きりをする。
悠理は手まで、熱くなるのを感じた。
こんな姿、誰かにばれていたりしないよね?
そう思い、こっそり、悠理は魅録を覗き込むと、野梨子と楽しそうに話をしていた。
気づかれてはいないようだった。
少し、ほっとする。
指きりの指を悠理が外そうとすると、清四郎が悠理の手をぎゅっと掴んだ。
そして、中腰になって立ち上がる。
「どこへ?」
魅録が気づいて、声をかける。
「悠理が体調不良というので、ちょっと。」
悠理が反論する間もなく、人ごみをかき分けて花火の観覧の輪から連れ出した。
清四郎が悠理をひっぱる形で歩いている姿はあたり前の光景だったので、他の生徒たちは不思議がりもしなかった。

学校を抜け出して、学校とは反対側にある河川敷のところまで、悠理を連れ出した。
「なんだよ。」
立ち止まると悠理が怒ったような口調で、清四郎に言った。
「ほら。」
そう言って、清四郎は学校の方を指差す。
ここからもよく花火が見えた。
清四郎は河川敷のベンチに悠理を腰をかけさせた。
「最近、僕のことを避けてませんか?悠理。」
「そんなこと、ない。」
やっぱり、目をそらしながら答えた。
「そんなことなければ、僕の目を見ながら、答えてください。」
清四郎が悠理の両方の頬に手を添える。
「…。」
悠理は清四郎を見つめる。
今にも火を噴出しそうなくらい、顔は熱くなるし、心境としては目をそらしたいが、そらせなかった。
清四郎の顔が徐々に近づいてきて、悠理は静かに目を閉じた。
やわらかい感触が唇を被う。
遠くで、花火の音がする。
触れていた唇が離れて、悠理は清四郎に抱きしめられた。
清四郎の心臓の音が聞こえる…。
とても、ドキドキしていた。
悠理の心音も聞こえそうだったが、清四郎の心音を聞いていると、なんだか笑いが出てきそうになった。
こんなに、清四郎もドキドキしている…。
思わず、クスッと笑いがもれてしまった。
「何がおかしいんです?」
清四郎がムッとして言った。
「だって、清四郎の心音が、こうしていると、よく聞こえるんだ…。あたしの心音に負けないくらい大きい…」
そういうと清四郎もクスリと笑った。
抱きしめていた悠理を少し離すと、もう一度キスをした。
下唇を甘噛みされて、悠理は体の奥がじーんとなる。
そして唇の隙間から、侵入する舌に翻弄されて、くらくらしてきた。
頭の芯もぼーっとしてきた。
”これで、最後の花火でーす”
そんな放送が聞こえてきた。
唇を離す。
「最後くらい、観ましょうか。」
清四郎は悠理の肩を引き寄せて、言う。
悠理は清四郎の肩に頭を寄せた。
最後は色とりどりのたくさんの花火が盛大に上がった。
「悠理、来年も二人で一緒に見ましょうね。夏に、浴衣を着て…。」
「うん。」
キスをして、気恥ずかしかったから、花火を見ながら、答えた。
まだ悠理の心臓はバクバク言っていた。
「悠理、ずっと、好きでしたよ…。」
悠理は驚いて、清四郎を見た。
「なんで、驚くんですか?」
怪訝げな顔で清四郎は悠理を見た。
悠理はキスまでされていても、気づいていなかった。
「…悠理は?」
「あたしも、好き…。」
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