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みかんと惑星

有/閑/二/次/小/説/のブログです。清×悠メインです。 当サイトは、原作者様・出版社等の各版権元とは一切関係ございません。 最初に注意書きをお読みいただければと思います。

変わっていく夏 3

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変わっていく夏 3

 

-9-

夜、食後、宴会が男性部屋で始まった。
地酒を買い込んで飲む。
午後11時。
一升瓶が2本、空いている。
野梨子は、明日、用事があり、早々に帰るので、「寝ます」と言って、去っていった。
可憐と悠理と美童は赤ワインを開けはじめ、清四郎と魅録は四合瓶の日本酒を開けた。
「分かれるもんだね。お酒も」
美童がいう。
彼も結構、酔っ払ってきた。
可憐に微妙にからんでいる。
「可憐のパンツみても嬉しくないけどさー。1回くらい、可憐と寝てみたい。」
「うるさいなー、スケコマシ!。私は美童なんかと寝ないわよ。馬鹿じゃないの。」
「馬鹿って、可憐。」
「私、まだ玉の輿、狙ってるんだから!」
まぁ、相変わらずの会話ではあったが…。
「でもさぁ、可憐。」魅録が口を挟む。「やっぱり、接客業やったほうがいいって。可憐らしいし。」
「だから〜、私は玉の輿なんだってば。」
悠理はそんな会話を後ろで聞きつつ、部屋の外へ出た。
−−酔っぱらったかな…。
男性部屋のドアにもたれかかり、ふぅ、と息をついた。
通路の窓には、大きな月が映っていた。
−−ちょっとだけ、月を見てこよう。
結構な千鳥足で、自分の部屋とは反対側へ歩き出した。

清四郎は3人の話を上の空で聞いていた。
今日の悠理をぼんやり思い出していた。
−−悠理の印象が変わったな…。
悠理が出て行ったのを見送って、水が飲みたいな、と思い、通路に出た。
悠理が部屋とは逆方面に歩いていくのが見えた。
−−どこに行くんだ?
ついていく。
中庭に出られるところがあり、そこから、サンダルを履いて、外に出て行くのが見えた。
清四郎もサンダルを履いて外に出る。
すると、ベンチに座って、ぼんやり月を見ていた。
「悠理。部屋に戻らないんですか。」
声をかけるとゆっくり振り向いた。
「うん。酔ったから、風にあたりたかった。」
「もう、9月だし、あまり長い時間いると冷えますよ。」
そういいながら、清四郎は悠理の隣に腰掛ける。
「そだね。」
ぼんやりと言う。
昼間とは大違いな緩慢さ。
「明日でさ、帰るんだよね。みんな。」
「そうですね。」
「年々、皆、変わっていくよね。それぞれ、違うところで、自分の人生を歩みはじめてるからなんだよね…。」
−−一番変わったのは、あなたです。
「清四郎も野梨子も、昔みたいに、仲良しじゃなくなったし、わたしと魅録もいまだに仲のよい友達ではあるけれど、彼に彼女が出来たことによって、友情にもひずみが生じてしまった気もするし…。」
「うん。」
黙って頷いた。
「美童もいまの彼女以外は見えてなくて、可憐は相変わらずだけど、自分の方向を決めつつある。」
月を見上げる。
「わたしは、何も変わらない。就職活動も、自分が何か変わればと思ってやっているだけだし。そう思うと、自分だけ置いていかれてしまったような気がして、とても寂しい。」
「悠理…」
悠理は清四郎の方を見た。
すると、ゆっくり立ち上がる。
清四郎の方を見ると、寂しげに顔を一瞬ゆがめた。
そのあと、ふっと笑った。
そして悠理は少しかがむとゆっくりと清四郎の唇に自分の唇を軽く重ねた。
−−!!!
悠理がさっと唇を離した瞬間、昼間とは違い、石鹸の香りがした。
清四郎はとても驚いて、硬直してしまった。
そして、悠理は、そのまま「おやすみ」というと、立ち去った。
清四郎の心臓は、飛び出しそうなくらい、激しく波打った。
悠理の香りが、清四郎に刻み込まれた。

 

-10-


翌朝。
野梨子は1人で食事を終えると、ホテルのバスに乗って、駅へ向かった。
昼から、彼のいるオケ部のコンサートがあり、そのために早く帰ったのだった。
「可憐〜、朝ごはんに行こうよ〜。」
「駄目よ、もう少し寝かせて。私、二日酔いで頭痛いの。」
「…。」
仕方なく、悠理は1人で食事会場へ向かった。
すると清四郎が1人でいた。
「おはよう。清四郎。」
「おはよう。悠理。」
とりあえず、真向かいに座る。
「美童と魅録は?」
「部屋で寝てますよ。」
「そう、可憐も。昨日、一体、どのくらい飲んだんだろう?」
「さあ。」
一見普通の会話だった。でも、お互いに夜のことは意識していた。
−−清四郎、忘れててくれないかな…。
−−悠理、覚えているんだろうが…。
各々思っていることは別々だったが。
悠理は、昨日の自分の行動を酔った上でとはいえ、反省していた。
−−わたし、キス魔ではないんだけど。
なぜか、あのときは、清四郎にキスがしたかった。
振り返ると月明かりで、とても綺麗に見えたから。
お酒で多少上気していた顔が、色っぽかったから。
清四郎は、実はあのあと、暫く、あのままだった。
やわらかい唇の感触を指でなぞっていた。
理解できない悠理の行動を理解しようとして。
でも、結局、何もわからないまま、部屋に戻った。
部屋に戻る道で、心臓の爆音は消えていたが、なんとも甘い感情が胸に残った。
しかし、部屋に戻ったら、それは打ち砕かれてしまった。
部屋を出るときに開け始めたワイン、日本酒は空になっていた。他に2本ほど、ウィスキーが空いていた。
そして、雑魚寝状態の魅録と美童。そして、ちょっと離れたところに可憐。
とりあえず可憐を起こして、部屋に送り届けた。
”この人たちは…。1時間も経たないうちにこんなに飲むなんて…。”
そう思いつつ、部屋を片付けたのだった。
「あの人たち、起きますかね…」
「ほんと。チェックアウト10時なのに…。」
「一応、二日酔いの薬、飲ませましょう。」
「そだね。」
会話は上滑りするばかりだった。お互いに昨日のことには一切触れなかった。

 

-11-


食事を終えて、部屋に戻ったが、まだ、3人ともボロボロだった。
美童はずっとトイレで吐いている。
「俺らさぁ…。あとから帰るから…。先に帰ってて…。」
魅録は旅館の浴衣のまま、頭を押さえつつ、清四郎にいった。
「私も、駄目、少し休んでから帰る…。」
可憐もなんとか洋服は着て、男性部屋に悠理と来たが、来るとすぐにソファの上に座り込み、そこで、突っ伏している状況だった。
「のみ過ぎなんですよ…。全く…。」
清四郎が呆れながら薬と水を配布する。
「じゃあ、こっちの部屋だけ、延長しましょう。可憐は、ソファでいいんですよね?」
「うん。」顔を上げずにいう。
「あれ?そういえば悠理は?」
魅録が顔をしかめながら言う。相当頭が痛いらしい。
「いるよ。」
荷物を持ったまま、ドア付近に立っていた。美童を見ていたらしい。
ノースリーブの青の透け感のある同じ紺の花柄のワンピースをきていた。
−−なんか、違う…。
3人は思った。
−−なんでワンピなんだ(魅録)。
−−悠理が美人に見えちゃってるじゃない(可憐)。
−−かわいい!(清四郎(ポッ))。
ん?と清四郎は思った。なんでかわいいなんだー!!!と心の中で叫んだ。
−−悠理なんて猿じゃないかー。
かわいいと思ったのが、悔しかった。
「なんでみんな変な顔してんの?」
「あ〜、なんか今回、悠理にペース狂わされっぱなしだわ。」
可憐は突っ伏したまま叫んだ。
「俺も」魅録も頭を押さえながらいう。
「わたし、何もしてないじゃん…。」
「そうだけど…。こんな悠理だったら、付き合ってもよかったな〜。」
「何、言ってんだ?魅録。」
悠理は呆れた顔をする。
「第一、おまえの彼女、怖いからやだよ〜。張り合いたくない。」
ほんとに怖そうだった。
「そんな怖い彼女とつきあってるの?魅録。」
「そんなことないけどさ。…ってどうでもいいだろ。頭いてぇ…。」
魅録はそのまま、突っ伏してしまった。
「私も、気持ちわるーい。美童、いつまでトイレ入ってんのよ〜。」
美童、可憐、魅録の3人は、そこから動こうともしなかった。
「じゃ、とりあえず、レンタカー返して、帰りましょうか。」
「うん。」
清四郎と悠理は2人で帰ることにした。
2人で帰れることが、清四郎は嬉しかった。

 

-12-


車に荷物を入れると、ナビを設定した。
「郡山乗り捨てで、帰りましょう。」
「OK。」
「どこか、寄りますか?」
「ううん。別に、どこにも寄らなくともいいよ。新幹線の中で、お弁当を買おう♪」
嬉しそうにする悠理。
「でもせっかくだから、湖、一周してから帰りませんか。」
「いいよ。」
−−やっぱり、食い気なんですか…。昨日のは、やっぱり、夢だったんだろうか…。
たわいもない話をしながら、湖沿いを走る。
でも、清四郎は、話をしながら上の空だった。
気になってしかたがなかった。
悠理も昨日のことは気にかけてはいたのだが、あえて知らない振りをしていた。
せっかく、こうして一緒にいる時間が、今以上に気まずいものになってしまいそうな気がして。
「少し、歩きませんか。」
清四郎が切り出す。
途中、歩けそうなところで、悠理は車をとめた。
暫く歩いたところで、「こっちの湖も、綺麗だね。」と悠理がぎこちなく微笑む。
昨日のことを意識しているのが明白だった。
それに後押しされるように、清四郎が切り出す。
「悠理、昨日のことなんですけど。」
「うん。」
−−やっぱりか…。
「どうして、あんなことを…。」
清四郎はあえて冷静を装って聞いた。
本当は、いまにも心臓が飛び出しそうだった。
「…なんとなく。」
−−なんとなく!?で、ぼくが寝られないくらい、悩んだんですか…。
脱力した。
「…清四郎が綺麗に見えたから。」
「悠理…、そういう理由で…。」
半ば呆れて言う。
−−そう、そういう奴だ。人の気も知らないで…!
清四郎はちょっと怒りモードになりつつあった。
「怒るなよ、清四郎。わたしのファーストキスだったんだから。」
顔を赤くして慌てた様子で悠理が言った。
「…!!!」
その言葉で、怒る気が一気に失せた。
次の瞬間、悠理を抱きしめていた。
香水の匂いが鼻をつく。
「清四郎…。」
悠理の心臓の鼓動が早まる。
「ばか悠理。」
悠理は、清四郎を見上げた。
「キスは、こうするんです…。」
一瞬、悠理の顔を見て、微笑かけると清四郎の顔が近づいてきた。
唇が触れる。
悠理は清四郎に両手で顔を挟まれ、少し顔を斜めにされる。
清四郎の舌が悠理の舌に絡めまってくる。
悠理は頭の奥がしびれるような感じがした。
どのくらいキスをしていたのか。
唇を離すのが名残惜しいように、清四郎はゆっくり悠理から唇を離した。
「帰りましょうか…。」
「うん。」頷いたが、すっかり力が抜けてしまって、ふらついた。
悠理の腰に手をあてて、清四郎は歩き出す。
車に乗り込むと、「…彼女とは別れます。」と静かに言った。
「悠理のことが好きになってしまったみたいです…。」
悠理の顔が一瞬、輝き、そして清四郎に抱きついていた。

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