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みかんと惑星

有/閑/二/次/小/説/のブログです。清×悠メインです。 当サイトは、原作者様・出版社等の各版権元とは一切関係ございません。 最初に注意書きをお読みいただければと思います。

変わっていく夏 2

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変わっていく夏 2

                                                                  -5-


お風呂から上がって、いちおう洋服を着て、食事会場へ向かった。
魅録たちが着いたのは夕飯ぎりぎりだった。「ごめん、道が混んでて。」と魅録が謝りながら食事会場に入ってきた。隣には清四郎もいた。どちらも余り変わらない。清四郎はオールバックをやめて、適当に前髪をおろしていたが。
「それにしても。プレジデントの3人は変わったな〜」
そういいながら魅録は席に着いた。悠理の向かいに座る。悠理の隣は清四郎。その隣が可憐。可憐の向かいが野梨子。そして美童は魅録の隣。
酒を飲みながら、食事をする。
食事をしつつ、可憐、魅録、清四郎は悠理を時々盗みみた。
−−変わったなア…。
がっついてものを食べずに、よく噛んで食べていた。そして、乱暴な言葉遣いが減っている。
−−何があった?
3人は不審な思いでいっぱいだった。
特に清四郎は悠理が魅録と話しているときに時々ふと見せる穏やかな笑顔にドキッとした。
−−お母さんが"悠理ちゃんが変わった"と言っていたのはこれでしたか。確かに変わりましたよ…。僕が柄にもなくドキッとしますし。
「清四郎、何?わたしの顔になんかついてる?」
「いえ、何も。」顔を赤らめる。
「そうよ〜、悠理の顔、さっきからほうけたように見てるわよ。」可憐が突っ込んだ。
慌てて清四郎は否定する。
「ほうけてなんてみてませんよ!ただ大口あけて掻き込んで食べてないな、と思ってただけです!」
「あ〜、それは俺も思ってた。やっと、男でもできたのか?」と魅録。
−−できるわけ、ないじゃん。
悠理は心の中でつぶやく。できてれば、今ごろ、もっとハッピーな顔していたよ。
「あたしも不思議に思ってたのよ」と可憐。
美童と野梨子はクスクスと笑い出す。
悠理は少しかっこつけて「知りたい?」と聞いた。
「う、うん。」3人は声を揃えた。
「じつは。」
「じつは…。」
「就職活動してんだ。わたし。」
「就職かつど〜う!」声を揃えて驚く。
「自分の家があるじゃない。」
「う〜ん、ま、親に頼らずに自力で生きてくっていうのも一つの選択肢としてありかなと。」
悠理は自分でいいつつ、かっこい〜い!と思った。
3人はポカンと口を開けた。悠理の口からそんな言葉が出るとはおもわなかった。
可憐はフォークを落としそうになった。
「また悠理、そんなこと言って。」野梨子が突っ込む。
「就職課の人の売り言葉に買い言葉ですのよ。”どうせ就職出来たとしても、自分の家関係でしょ”って言われて、家関係以外に就職するとたんかきって来たらしいんですの。」
「それだけじゃないよ!楽しいOLライフを過ごすんだ。財布1つ持って、制服きて同僚とランチ!」
威張っていう。
「な〜んだ、そんなことか。」
3人は一様にがっかりした。そんな中、1人清四郎はがっかりしつつも微笑んでいた。
−−なんだ、男じゃなかったんですか…。

 

-6-


悠理の謎?もとけ、食事も終了し、一度女性部屋、男性部屋の各部屋に戻ることになった。二次会は男性部屋で行うことが決まり、準備出来次第集まることになった。
可憐と野梨子はスウェットに着替え、男性部屋へ向かう。美童も部屋着に着替えていた。「あれ?2人は?」可憐が聞く。
「お風呂に行ったよ。」
「悠理も行ったのよ。あの子、結構温泉好きよね」と可憐が笑った。
「皆いませんし、3人で飲んじゃいましょうか。」と野梨子の一言で宴会がスタートした。10分ほどして、ホテルの浴衣姿で男性二人が戻ってきた。
「おかえり〜、飲み始めたよ。乾杯しよ〜」と可憐。
お風呂上がりのビールを乾杯する。
悠理抜きで宴会は進む。一次会の酒とかもあってかなり皆よっぱらってきた。
30分ほどしても野梨子は悠理が戻ってきていないことに気付き、部屋をちょっと確認しようと思った。それで、こっそり部屋を出たつもりだったが、清四郎が追い掛けてきた。
「野梨子。ちょっと話がしたいんです。」
そういって、部屋のない、ただの通路の前に連れていった。
「野梨子、あれからずっと避けてますよね。」
清四郎は真剣な表情で野梨子を見つめた。
野梨子は清四郎を見ずに「避けてなんかいませんわ。」といい視線を下に落とした。
「あのとき僕は、真剣だった。」
野梨子の肩を清四郎は掴んだ。
「そんなこと!」
一瞬清四郎を見つめる。
「そんなこと言われても、私は清四郎には男を感じられないんですのよ。この先何年経っても絶対恋愛対象にはならないですわ!」
強い口調で野梨子がいい、清四郎をみた。愛情というものは感じられない目だった。
−−野梨子…。
肩にかけていた手をおろし、がっくりと肩を落として、視線を下に落とした。
と、その瞬間。カタンと音がして振り返ると悠理がたっていた。旅館の浴衣を着て、髪をアップにして、お風呂グッズを持って。
「ごめん…。聞くつもりはなかったんだけど…。」
そういって2人のそばを通り過ぎ、女性部屋に入っていった。
悠理の白いうなじが、清四郎には印象的だった…。
部屋に入ると、悠理はTシャツとスウェットに着替え髪を下ろした。
−−清四郎、随分、がっかりしていた…。いまだに野梨子への思いを忘れられないなんて…。でも、清四郎じゃ、野梨子の彼氏になれないよ。おまえ達も、近すぎる。
「悠理〜、まだ?」
可憐から声をかけられた。
「いま、行く。」
何事もなかったように男性部屋にいった。
野梨子と清四郎は戻っていた。
野梨子は魅録の隣で話をし、美童と可憐と清四郎が話しをしていた。
悠理は魅録と野梨子のそばに座り、ビールをあけた。
野梨子と清四郎は不自然なほど、視線を合わせなかった。
悠理はそんな清四郎を見て、いまだにふっきれていない野梨子への思いに対して、怒りを感じていた。
−−清四郎は、彼女がいるのに、…。彼女がかわいそうだ…。
「ところで、清四郎」
悠理は清四郎に声をかけた。
「先日の彼女は元気?」
そう。わざと。
−−さっきのを見てて、わざといってますね、悠理…。
「はい。元気ですよ。僕より4つ上なんですけど、全然、幼くて。」
目は笑っていっているが、全然、真剣じゃなさそうな感じを悠理は受けた。
−−さっきの見ちゃったからかもしれないけど。
可憐は「清四郎の恋愛話、はじめてね〜」といいつつ、面白がって、清四郎に突っ込んで聞いていた。
清四郎は突っ込まれて、困惑しっぱなしだった。
悠理は、清四郎の話だけ振って、魅録たちとの会話に入った。
野梨子は、悠理の話を聞いて、一瞬、清四郎を軽蔑した目で見ていたが、それはほんの一瞬だけで、あとは穏やかな表情で話をしていた。

2日目。
そばと塔のへつりを見に出かけた。
何事もなく過ぎる。
夜の宴会も当り障り無く、過ごした。
ちょっと遠出したため、少し早く就寝。

 

 

-7-


3日目。
ラーメンツアーグループと湖で遊ぶグループに分かれることになった。
湖で遊ぶグループは魅録、美童、野梨子、可憐。
ラーメンツアーは悠理、清四郎。
「…っていうか、なんで4対2なんだよ。」
苦虫を踏み潰したような顔で悠理がいう。
「だって、あんた、ラーメン食べたいんでしょ。清四郎と2人で行ってきなさいよ。」
あっさり、可憐が突き放す。
悠理は清四郎の顔を見上げる。
「仕方ないでしょ。悠理はぼくと出かけるのは嫌かもしれませんが。」
「そんなことは、ないよ。」
−−ほんとはちょっといやかも。
一昨日の件がある。
「じゃあ、行きますか。」
2人は美童が借りたレンタカーに乗りこんだ。
レンタカーの保険の関係で運転は悠理がした。
左側に清四郎が座る。
二人とも、あまり話しをしない。
清四郎は、窓の外をずっと見てる。
−−きっと、野梨子のことを考えているんだろうな。わたしと一緒にラーメンを食べにいくのも、きっと、野梨子と一緒にいるのが、嫌だったから…。
そう考えると、少し落ち込む。
そして、別に何をされたという訳でもないのだが、そばにいるのが嫌だった。
嫌いとか、そういうんじゃないのだが。
なんとなく、この雰囲気に耐えられず…。
でも、沈黙も嫌で、声をかける。
「清四郎さぁ…。どこのラーメンやさんに最初に行く?」
「そうですねー。ちょっと携帯で調べてみましょうか。」
携帯のwebサイトで検索する。
「じゃあ、まこと食堂にしましょう。」
「OK。ちょっと、車止めるから、待って。」
ナビを設定するのに、悠理は車を脇によせて止めた。
「電話番号で設定できるよ。このナビ。電話番号、書いてある?」
「電話番号ですか。ちょっと待ってくださいね。」
そういって、検索しはじめた電話を悠理も一緒に覗きこんだ。
シトラス系の香水のにおいが、清四郎の鼻をつく。
−−いつのまに、こんなものまで…。
いままでは、石鹸の香りしかしなかったのに、香水の香りがする。
清四郎は驚いた。
「で、電話番号。早く教えてよ。」
「あ、すいません。024XXXX」
悠理が入力する。少しうつむいて入力していたので、少し長くなった髪が、顔にかかる。
それを掻きあげる。
そんな様子をぼうっとしながら、見つめていた。
−−髪、ストパかけたんだろうか…。やわらかそうだな…。
「なんだ、清四郎。気持ち悪いな〜、昨日から。なんかわたしのこと、見てない?」
「そんなこと、ないですよ。見ていないといえば、嘘になります…。さっきから、髪の毛が揺れるので、食べたりしないんだろうか?と気になっただけです。」
「ふぅん。髪の毛なんて食べやしないよ。今から、ラーメン食べにいくんだし…。ってさ、気持ち悪いこと、思い出させるなよ。あのミイラ事件、思い出したじゃないか!」
清四郎の腕をたたく。
「ラーメンも食べたくなくなってきた…。」
相当、落ち込んだ顔をしている。
−−失敗した…。せっかく、少し雰囲気がよくなったのに…。
「ごめん。じゃあ、とりあえず、会津にでもいきますか。」
引きつった顔で、清四郎は言う。
「う〜ん。…でもラーメン食べる。名物だし…」
やっぱり、ラーメン好きな悠理としてはラーメンが食べたかった。
清四郎は思わず笑ってしまった。

結局、3軒のラーメンやさんにいった。1時間くらい並んだ店もあった。
「食べ過ぎ〜。久々に食べた〜。」
3軒目の店から歩きながら、悠理は言った。
悠理は、最近、控えめに食べていたのだが、麺に絡み付くスープがおいしくて久々にたくさん食べた。
今日もジーンズにTシャツというラフな服装をしていたのだが、ジーンズが少しきつくなり、おなかをさすりながら歩いていた。
清四郎はそんな悠理の食欲によく付き合ったと我ながら思った。
そして、思わず悠理をみて、笑う。
「笑うなよ。」
朝出るときまで警戒していた悠理とは異なり、昔の笑顔を見せていた。
−−かわいいなぁ…。
知らず知らずのうちに清四郎は思い、微笑んでいた。
そんな清四郎を見て、悠理は胸がドキッとした。
−−?

 

-8-


駐車場についた。まだ午後2時だった。
「湖付近でも、周りながら、帰りましょうか。」
「OK」
車を発車させて、猪苗代湖へ向かう。
「みんなは、どこの湖に行ったんだろう?」
「どこでしょうね。たくさんあるから、周ってくる、としか聞きませんでしたね。そういえば。」
「行けば、会うかもしれないな。」
「そうですね。」
なんとなく、皆に会いたくないなぁ…と悠理は思っていた。
こうして2人で遊ぶのも悪くない、そんなことを考えていた。
悠理は車を降りると湖方面へちょっと小走り気味に歩き出す。
「清四郎、早く!」
少し向こうで悠理が待つ。
風で長くなった髪の毛が揺れる。
やわらかそうな猫っ毛に、ちょっと見とれてしまった。
悠理が近寄ってきて、急に清四郎の手をとった。
清四郎はドキドキした。
そのまま、手を引かれて、猪苗代湖に着いたが、皆はいなかった。
悠理は清四郎の手を引いたまま水辺へ向かう。
「靴に砂が入っちゃうね」
そう言って、笑顔を向けた。
また、清四郎はドキッとした。
慌てて、手を放す。
−−なんか、ぼくがまずいかも…。この状況。
顔が知らず知らずのうちに赤くなる。悠理は気づいていない。
手を放された悠理は、改めて、手をつないでしまった状況に気づいた。
ほとんど無意識に、当たり前のようにつないでいた。
−−はぁ〜…。失敗した。
ちょっと落ち込む。
−−そうだよね。彼女いるし、野梨子のこと好きだし。わたしなんて入る余地なし。…って、何考えてるんだ。わたし。
砂の乾いているところに、悠理は座った。隣に少し、間をあけて、清四郎が座る。
「海みたいに、波が引いたり寄せたりするんだね。」
「そうですね…。」
「…。でさ、野梨子のこと、どうするの?っていうか、もう、駄目なんだろうけどさ。あと、好きな人がいるのに、彼女とつきあってて、いいのかよ…。かわいそうだよ。」
下を向きつつも一気にまくし立てた。
「随分一気に、唐突に本題に入ってきますね。」
困惑した表情で言う。
「野梨子のことは、諦めます。野梨子に恋愛感情をもてないって、2回も言われましたし。」
寂しげに笑う。
悠理も少し、寂しくなった。
「まぁ、でも、今日は楽しくて、全然、野梨子のことなんて考えてなかった。結局、その程度だったのかもしれません。子供が大事なおもちゃ、といったら、野梨子に失礼なのかもしれませんが、それをとられるのが嫌だっただけなのかも…。恋愛というほど、恋愛感情は持っていなかったんだと、思います。昨日は少し落ち込みましたけどね」
苦笑しながらいう。
−−…。
「彼女は?」
「彼女は、つきあってます。ぼくのことを好きなんだそうです。ぼくには好きな人がいるといったんですけど、その人とうまくいくまで、私と付き合ってほしいといわれて。野梨子にフラれて、落ち込んでいた時期だったんですけど…。そういえば、もう、半年以上になりますね」
「酷い男だな…。」
悠理はうつむいたまま、ぼそっといった。
「酷いですか…。」
「うん。優しくするのは、残酷だよ。彼女は期待しているよ。」
顔を上げる。
「清四郎が、自分のほうを見てくれるのを…。」
まっすぐ、瞳は清四郎を捉えていた。
時間が、一瞬、止まったような気がした。
清四郎が、息を飲む。
そのまっすぐな瞳が息苦しく感じた。
また悠理はうつむきながら、話はじめた。
「そして、そうやって、女に逃げるのは、おまえらしくないな…。」
ただ馬鹿だ、猿だ、珍獣だと思っていた悠理にそう言われて、心にグサッと言葉がつきささった。
−−そう、ぼくらしない…。
でもそれ以上に驚いて言葉がでなかった。
−−悠理が成長している…。
衝撃だった。
容姿も変わったのも結構驚いたが、内面も変わっていたことに、ほんとに衝撃を受けた。
−−ぼくも、変わらないと。
そう思った。

暫く、ぼーっと、湖を眺めていた。
「さてと。そろそろ、ここを出るか。」
悠理が立ち上がった。
ポンポンと砂を払い落とし、そのあと、清四郎に手を差し伸べた。
「わたしたちがいるよ。清四郎。」
そういって、にっこり笑った顔が、美しかった。
悠理じゃない、悠理。
−−つい先日までの、高校の頃を思わせる、悠理ではないんですね…。
「そうですね。」
清四郎は差し伸べられた手を取って、立ち上がった。
本当は、そこで引き寄せて、抱きしめたい衝動に駆られていた…。
なぜ、そうしたかったのか、わからなかったが…。

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