有/閑/二/次/小/説/のブログです。清×悠メインです。 当サイトは、原作者様・出版社等の各版権元とは一切関係ございません。 最初に注意書きをお読みいただければと思います。
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注:監禁・殺人系が苦手な方はご遠慮ください。
あれから、暫く日数が経ち、学校は夏休みに入った。
淑江の元には、家庭教師は来なかった。
史和のところにも来ていない。
こっそり会ってるのだろうけれど、この家には姿をあらわさなかった。
父親が、生むのを反対しているというのも、あったが。
けれども、父親は海外にいて、不在だった。
『私は別れない。あなたたちの結婚は、許さない。』
淑江はそう告げた。
何度も。
継母にもそう言った。
継母は淑江が許さなければ、結婚をさせないと考えていたようで、史和が何度も頼みにきていた。
そこまで執着するほどのことか?と淑江自身も思ったが、やっぱり、二人のことは許せなかった。
結婚をしたら、その日に自殺しようとも考えていた。
あてつけで。
けれども、違う形で、淑江は死を迎えることになった。
大雨の降る、あの日の夜。
ずぶ濡れの史和が、淑江の部屋に入ってきた。
「何よ…。」
机で勉強していた淑江は、史和を睨みつける。
「今、先生のところに行ってきたのよ。」
「だから…。」
「あたしが妊婦であることを先生は心配してくれたわ。もう、先生は、親の心境なのよ。この子の。」
そう言って、右手で自分の腹を撫でた。
淑江の神経に触る。
妹だけど、やっぱり、許せなかった。
「出て行ってよ。あなたのノロケ話なんて聞きたくないし、絶対に結婚なんて、認めないんだから。」
「あたし、先生と約束してきたの。お姉ちゃんのことをなんとかするって。」
「なんとかするって、どういうことよ…。私はなんともされないわよ。」
淑江は史和を追い出そうとした。
と、その時。
「あっ…。」
淑江の頭部に激痛が走る。
史和は左手に、かなづちを持っていて、淑江を殴りつけた。
淑江はその場に崩れ落ちた。
史和は電気スタンドのコンセントを持ち出し、淑江の首をしめる。
意識が、遠のいていく…。
可憐と魅録は祥子から、姉と妹の1人の男性を巡る話を聞いていた。
妹が妊娠し、姉は絶対に結婚を認めない。
祥子としては、妹がおろすつもりがなく、家庭教師自身も、責任はとるつもりだったようなので、せめて姉が結婚を許したら、結婚を認めようと思っていたと話した。
祥子は溜息を着いた。
「何かが落ちるような物音がして、私が淑江の部屋に駆けつけたときには、淑江は既に息をしていませんでした。史和が勝ち誇った顔をして、電気スタンドのコードで淑江の首をしめてました。」
つらそうな顔をする。
自分の娘が、恐ろしいことをしていたのを目撃したのだから、仕方がない。
「で、警察には言わなかったんですか。」
魅録がそういうと、頷いた。
「ええ…。史和を犯罪者にしたくなかったんです。それで、私は、史和を淑江から引き剥がすと、淑江の遺体を作りつけのクロゼットの中に押し込めました。洋服を全て出して。その上、紐でクロゼットの観音開きになっている扉を括りました。」
「遺体を、クロゼットの中に放置したんですか!」
魅録は驚きの表情を祥子に向けた。
祥子は黙って頷く。
(遺体と一緒に寝泊りしていたのかよ…。)
そう思うとなんだか気分が悪い。
「遺体を押し込めたあと、引越しを考えた…?。」
可憐が言うと、祥子は頷いた。
「そのとおりです。私は大工をしている自分の弟に頼み、淑江の部屋を塞いでくれるように頼みました。荷物は全て別の部屋に運んで。あの部屋を空の状態にして、弟に潰した理由がばれないように、真っ赤なペンキを撒き散らして…。」
お茶を一口飲んで、話を進める。
「弟はちょっと不審に思ったようですが、『淑江がペンキをこぼしてしまったから』というと何も言わずにあの部屋を潰しました。ドアを取り払い、壁にして。壁自体の製作は淑江が死んでから、2日も経ってなかったと思います。」
(随分迅速に、行動を起こしたものだわ…。)
別の意味で可憐は感心してしまった。
「淑江には申し訳ないけれど、やっぱり、史和がかわいかったんです。自分のおなかを痛めて生んだ子です。」
「でも、あなたがやったことは犯罪だし、今も、淑江さんの遺体はあの壁の中にある…。そして、彼女は成仏できずに彷徨っているんですよ。」
魅録がそういうと、祥子は泣き出した。
「そうかもしれません。まだ、成仏できずに、いるかもしれません…。」
涙を拭う。そして、話を続けた。
「淑江の遺体を放置して、私たちは夫が海外赴任中にこの家に引っ越してきました。史和は、明るい笑顔を向けていました。でも…。」
嗚咽が止まらない。
淑江が目を覚ますと、狭い空間に閉じ込められていた。
息を吸い込む。
とりあえず、首は苦しいし、頭も痛いが、生きている。
血が、べったりと頭皮にくっついていて、気持ちが悪かった。
自分がどこにいるのか、全くわからなかった。
扉があるが、開けようとしても、開かない。
蹴っても何をしても、全く開かなかった。
明かりすらも、漏れては来ない。
(私は一体、どこにいるの…。なんで、こんなところに…。)
全て史和が、やったことなんだ、とは思った。
「開けて!」と声をあげようとしたが、喉が痛くて、うまく声を発することが出来ない。
(まだ、大丈夫よ…)
勿論、史和がやってくるはずがない。
継母は?
その時、ふと思った。
もし、継母が自分の声に気づいたとしても、やって来ないかもしれない。
やっぱり、自分の子供がかわいいだろう。
でも、「おかあさん!」と叫ばずにはいられなかった。
声がうまく出なくとも、「おかあさん!」と。
何度も何度も叫ぶ。
けれども、誰もやって来ない。
涙が溢れ出す。
食べるものも食べていない。喉も渇く。
私は一体どうしたら…。
淑江がやっとのことで狭い空間から外に出たのが、何日経過してからだったのか、全くわからなかった。
とりあえず、おなかもすき、体力も消耗している。
何よりも水が飲みたかった。
そして、自分の汚物で自分の周辺が汚れ、気持ちが悪かった。
何度も体当たりして、扉を壊して転げるように外に出た。
その時、はじめて自分が閉じ込められていたのがクロゼットの中だということを理解した。
部屋の現状に愕然とする。
室内は明かりが漏れるところはなく、闇の中だった。
外に出て、ふらふらとしながら、水を求め、ドアの方へ向かう。
開けようとして、ドアノブがないことに気づく。
何処を触っても、壁だった。
「開けて~!!!!」
大声で何度も叫ぶ。
けれども、誰も開けにはきてくれなかった。
もう、この部屋から出ることはできない。
部屋の中に閉じ込められてしまった。
しかも、荷物が一つもなくなっている…。闇の中、彷徨っても何にも当たらないのだ。あるのは壁と床ばかり。暖かいベッドも、勉強机も、何もかも存在しない…。
(私は生きて、ここにいるのに…。お父さん…。継母さん…。)
涙が止まらない。
それから、幾日もしないうちに、命はつきた。
「私を、ここから出して…。」
それが、最後に声を発して呟いた言葉だった。
こんな苦しみ、惨めな死を与えた史和と家庭教師を呪いながら…。
悠理と清四郎は黙って、映像を受け入れていた。
淑江の無念さ、悲惨さが伝わりすぎて、悠理は涙が止まらなかった。
まず、自分達がすべきことは、淑江に対して何かを訴えることではないんだと、悠理は悟った。
淑江が、自分達に訴えているのだ。
別に、野梨子や美童が憎いわけではない。
二人が単に自分を苦しめた人たちに似ているだけだった。
自分を苦しめた人たちが憎いことには変わりはないだろう。
けれども、淑江が訴えているのは、そのことだけではない。
”ここから、出して”。
それが一番の願いなのだろう。
悠理と清四郎は顔を見合わせると部屋を出た。
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(2006.11.12)壁の秘密にたどりつきましたが…。
ドアが塞がってしまったので決して開けることが出来ない扉になってしまいました。
淑江はかわいそうな死を迎えてました。史和は、酷いです。
「お姉ちゃん、話しがあるんだけど。」
淑江が受験勉強をしていたところに、史和が入ってきた。
「あたし、先生の子供を妊娠したの。だから、別れて!」
「史和、何を言ってるの?」
淑江が聞くと、史和はにやりと笑った。
「本当よ。母子手帳もあるわ。」
そう言って、淑江に母子手帳を見せつける。
「冗談よね?あなた、違う人の子を妊娠したんでしょう?」
「嘘じゃないわ!明日、先生来る日でしょ、聞いてみればいいのよ!」
「何馬鹿なことを言ってるの?先生はあたしの恋人なのよ?」
淑江は立ち上がると、史和に近づいていった。
うろたえてる淑江を見て、勝ち誇ったような笑みを史和が浮かべた。
「あたしとも付き合ってたのよ。」
「史和!そんな馬鹿なことを言うのはやめてちょうだい!」
「お姉ちゃん、お願い、別れて。あたしたちはこれから、二人で幸せになるんだから!」
「嫌よ!」
淑江は史和を突き飛ばした。史和が転ぶ。
「いった~い!お腹には赤ちゃんがいるのよ!何かあったらどうすんのよ!」
史和は淑江に叫ぶように言った。
「史和が悪いんでしょ!あなたが、泥棒猫みたいな真似をしなければ…。」
「お姉ちゃんに魅力が無いのが悪いんじゃないの!」
淑江はそういわれてカッとなった。
史和に憎悪の眼差しを向けると「そんな子、いなくなってしまえばいいのよ。」と言って腕を引っ張り、史和を
部屋からひっぱり出した。
(なんなのよ、あの子…。)
初めて妹が憎いと思った。
今まで、どんな意地悪をされても、妹だし、お継母さんが自分に気を遣って優しくしてくれていたことを知っていたから、憎いとか嫌いとかという感情を持たないようにしてきた。
しかも、父親はずっと海外に赴任したまま、不在だ。
高校を卒業するまではこの家を出ることはできない。
(どうして…。史和は私を一人にしようとするの…。)
自分には血の繋がった母も傍にいるのに。
どうして、恋人まで奪おうとするのか、理解できなかった。
淑江はその後、勉強もせずに、一人泣いた。
翌日、家庭教師がいつものように、いつもの時間にやってきた。
勉強が終わると、淑江から、家庭教師に切り出した。
「ねぇ、先生。」
「何?」
いつもの優しい瞳で家庭教師は自分のことを見てくれなかった。
何か、ちょっと怯えた表情をしている。
やっぱり、あのことは本当かもしれない、と淑江は思う。
淑江はおそるおそる聞いた。
「史和のことなんだけど…。」
「あ、史和ちゃんのこと…。」
黙りこむ。
(やっぱり、本当なのかも…。)
淑江は悲しくなった。
と、その時だった。
「お姉ちゃん、もう、先生のこと、解放して!終わったでしょ。勉強!」
そういいながら、史和が中に入ってくる。
そして、家庭教師を立たせると腕を絡めた。
「先生、言ってやってよ。あたしたちつきあってるんだって。はっきり。」
史和は、家庭教師を見つめた。
家庭教師は、渋々という表情で頷く。
本当に愛しているわけではない、という顔だった。
(じゃあ、なんで?)
「酷いよ、先生…。」
淑江はその場に泣き崩れた。
「史和も、酷い。…どうして、私から先生まで、奪うのよ。」
「奪うって、お姉ちゃんに魅力がないだけでしょ。お姉ちゃんなんて、顔だけじゃない。顔だけで、みんなから、ちやほやされて。お母さんも誰も彼もが、お姉ちゃんばっかり、褒める。先生だけなのよ、あたしのことをあたしとしてみてくれたのは…。」
淑江は絶句した。妹がそんな風に思っていたとは思わなかった。
「そんな…。だからって、こんなことしていい訳ないじゃない。あなたはまだ15歳なのよ。」
「歳なんて関係ないわ。初めて、あたしはお姉ちゃんに勝ったんだもん。」
「でも、先生は、あなたのことを愛してはいないわ!それでも、先生の子を生むっていうの?」
淑江にそういわれ、史和は一瞬、言葉に詰まる。
家庭教師は青い顔をして、自分達を見ていた。そして、口を開く。
「もう、やめなよ…。そんな風にいい争うのは…。」
「だって…。史和が…。」
淑江は泣きながら抗議する。
「…少し、僕と話さないか。」
ぼんやりとした口調で、家庭教師は言った。
「悪いけど、史和ちゃん、席を外してほしい。」
史和はそういわれ仕方なしに部屋を出て行った。
史和が出て行くと、家庭教師は溜息をついた。
「ごめん。淑江ちゃん、僕は史和ちゃんの誘惑に乗ったんだ。」
「いつからなのよ…!」
「淑江ちゃんがGWに熱を出したときだよ。あの日、キャミソールにミニスカート姿で、『先生、あたし、前から
先生のこと好きだった』といいながら、僕の首に腕を回してきたんだ。淑江ちゃんを見舞ってすぐ、君の部屋の外で、だ。最初、何を…と思ったんだけど、彼女の15歳にしては豊満な体つきをみていたら、なんとなく、どきどきしてしまって。そして、『あたしのこと、嫌い?』といいながら、上目遣いに僕を見て、僕の手を、自分の胸に誘ったんだ。」
淑江は史和のやったことに対して、吐き気を覚えた。
15歳の女の子が、そんな娼婦みたいなこと…。
仮にも、母は違うけど、妹なのに…。
家庭教師は続けた。
「僕は誘惑に負けて、彼女にキスをした。そして…。そのまま、彼女の部屋につれていかれて…。」
「そして、関係を持ったとでもいうの!」
淑江がそういうと、家庭教師は頷いた。
淑江の涙は止まらなかった。
「史和ちゃんのことは、本気ではなかったんだ。単に、スリルを楽しんでいるだけだったんだ。君に隠れて、抱き合っているというそのスリルと、柔らかな肉体と…。それだけのはずなのに、妊娠してしまったんだ…。」
「酷い…。」
それ以上の言葉はなかった。
ただの遊びなのに、妊娠させてしまっただなんて…。
そして、そのために、自分はこの人と別れなければならない。
酷い男だとわかっているのに、でも、そんなにすぐに「嫌い」という感情には切り替えられなかった。
「私は…。」
淑江は家庭教師を見据えた。
「絶対に別れないから。」
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(2006.11.3)壁の秘密まで、辿り着きませんでした・・・。それなのに、長い・・。ごめんなさい!